魔族専用殲滅砲台、ラドンゲルディマ
「ここにいた兵士たちは全員倒したわね」
セリナは周辺を確認しながら、ホッと一息つく。
魔界で護衛をさせている兵士たちだ。身体能力なり魔力を強化させるなど、なんらかの策を講じていると思ったのだが、人界に現れた魔界軍の兵士となんら変わらなかった。
時間稼ぎのつもりだったのか?
何のために?それもここに来たときの、異様な魔力と何か関係があるというのか?
「シヴァ。妹がいると言っていたな」
「うん。言ったよ」
ノヴェンレビィアを鞘に収め、言った。
「その妹の実力は、どれだけのものだったか覚えているか?」
「妹はーーユウリは、身体能力に特化している俺とは正反対で、魔法適性が異常なほどに高い。大抵の魔法なら、一回見ただけで扱えるほどの術式理解度。さらに≪終焉の魔眼≫を完璧に操れるんだ。それも十歳でね」
ほう。≪終焉の魔眼≫を十歳で。
圧倒的天才。その表現ですら生ぬるいな。
「でも、ユウリは生まれつき身体が弱くて、魔力量も少ない。せいぜい使える魔法は、一日で三、四回ほど。≪終焉の魔眼≫に関しては、身体の調子が良いときでも二十秒が限界だった」
大きすぎる才能を授かった代償。というものなのだろうか。神妙な面持ちを浮かべていた。
「シヴァも感じているだろう。ゼルレタから感じる魔力が」
「うん。冷たくて押し潰されそうな、まるで≪終焉の魔眼≫を使っている父さんの魔力のようなんだけど、少し違う。何かが混ざり合っているんだ」
シヴァも同じことを思っていたようだ。あの魔力は少なくともシーナのものではない。一度会ったときに、既に魔力を覚えているから分かる。だとしたら、あの魔力はーー
「さっきから何の話をしているの?」
セリナが話の中に入ってきた。
俺とシヴァは顔を見合わせた。俺が≪剣聖≫だとあの場で公言してしまった以上、ここまで来れば早いか遅いかの違いだ。
考えを察してか、シヴァも頷き口を開く。
「セリナさん。急な話で驚くと思うんだけどーー」
シヴァはセリナに全てを話した。
そして前世は、魔王の息子であったこと。白フードーー今の魔王は偽物で、本物の魔王ーーシヴァの父親と母親、妹が魔界のどこかにいるということ。
自分は白フードに殺され、三百年前のような戦争を起こさないように、俺にこの事態を伝えるために、この時代に転生したということ。
セリナは何も言わず、黙ってその話を聞いていた。
「ーーこの戦争は魔界の誰か、俺の知り合いが起こしたことなんだ。本当にごめん」
「シヴァくんが悪いわけじゃないんでしょ?だったら謝る必要なんてないわ」
謝罪を述べるシヴァに、セリナは気にしていないと、そう言い切る。
「戦争を止める。そして本物の魔王ーーバハルとシヴァの家族の救出。それが俺たちのやるべきことだ」
「分かったわ。必ず助けましょう」
≪飛翔≫で魔界都市シンベルファルスへと入っていく。
見渡しの良い高い建物の上で、俺たちはシンベルファルスの現状を見ていた。
魔界の兵士たちが何やら慌ただしく動いている。監視に当たっていた兵士たちと連絡が途絶えて、焦っているようだ。
ここでの戦いはできれば避けたい。魔界の一般民に被害を及ぼす可能性が大だ。
瞬間、人間界の方から魔力を感じる。振り返ると、無数の飛竜がシンベルファルスへと向けて、飛んできていた。その背中には、兵士と魔導師たちが乗っている。
「ちょっ!なんで!?アムルがあれだけ言ったのに来るなんて!」
それもそうだが、それよりも気になるのがーー
魔界にいるにも関わらず、彼らの魔力が乱れていない。魔界に来たことがない彼らからしたら、この環境は毒でしかない。適応能力があるわけでもない。一体なぜーー
そこであるものに目がついた。
「あれかーー」
彼らは首元に、金色に輝く結晶石のようなものを身につけていた。
それもただの結晶石ではない。三百年間、カリュエヴァマの魔力を吸い込んでいた結晶石だ。
神の剣の魔力を取り込んでいる結晶石を身につければ、魔気の影響を受けることもない。
一度だけあの方法で魔界に攻め込んだことがある。
だが、あの結晶石は希少で代えが利かない。だからこの戦い方は得策ではないとして、以降は禁止としていたはず。
「あんなガキの言うことなど、誰が聞く耳を持つことか」
玉座に深く腰掛け、オーシスはそう言った。
「魔族は一匹残らず殲滅する。例えどんな犠牲を払おうとも、この戦争にケリをつけて、汚れのない世界を作るのだ!」
などと偉そうに言っていそうだな。
シンベルファルスの城壁を超えたところで、人界軍の兵士と魔導師たちは、飛竜の背中から飛び降りる。
「決起のときはきた!魔族に天誅を下せ!」
そう言ったのはダンテだ。右手を大きく前に出し、彼らに指示を出す。
兵士たちの大声が轟き、シンベルファルスへと侵入する。
「お前たち、少し寝てろ」
魔力を込めた言葉で、大声で言った。
それぞれの兵士たちは次々と倒れていく。
「国王!魔界へと侵入した兵士たちとの連絡が途絶えました!」
「ならばあれを用意しろ」
オーシスが言ったあれ。
魔族を滅ぼすために、何百年極秘で造られた魔族専用殲滅砲台、ラドンゲルディマだ。
その砲台の魔力源となるのは、カリュエヴァマの結晶石。魔界へと向かった兵士たちに持たせたことで、もう半分ほどしか残っていないが、それだけあれば十分だと、オーシスは思っていた。
「ラドンゲルディマ!用意!」
その声と同時に、砲台が魔界へと焦点を合わせる。そして結晶石に溜まっている魔力を、砲台へと移し充填される。
「まだだ!もっと魔力を溜めて……発射!」
金色の輝きが魔界へと放たれた。
「今度は大砲ね。まったくどれだけ準備してきたんだか」
その光景を眺めていたシヴァが言葉を漏らす。
流石に間に合わない。金色の大砲は城壁をあっという間に破壊した。施されていた魔法陣が反応して、魔法障壁を展開された。
軋みを上げて、ビキビキと魔法障壁が崩れていく。だが、魔法障壁が消滅すると同時に金色の大砲も、魔力切れを起こした。
「くそっ!」
オーシスは悔しげに肘当てに拳を打ち付けた。
俺は地を蹴って、魔界都市を駆けていた。
シヴァとセリナも俺の後に続いた。
これ以上、誰も血を流す姿を見たくないというのに。あそこまで言って、まだここまでやろうとするのだから。
「国王がまた変なことを仕出かす前に、この戦争を終わらせるぞ」
今日の7〜9時台にもう一本投稿する予定です!




