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災害と呼ばれた古代魔法

すみません。

どうしてもこの話だけ上げたかったので、投稿しました。次の投稿は……気長に待ってくださると嬉しいです

 人界軍がいるであろう場所から発せられる圧倒的ともいえる魔力に、魔王十傑雄の五人は反応を示した。

 レーベックは舌打ちをして、忌々しげにその方向を睨む。


 今の時点で、レーベックには二つの誤算が生じていた。一つ目は支援魔法。≪聖祈楽園(ヘルヴァライズ・ベルン)≫だ。≪剣聖≫がいるとはいえ、兵力の数、質。その全体を見て言えばどうしても魔界軍が有利。

 数はどうしようもないため、一人一人の能力を向上させる支援魔法を使ってくると踏んでいた。

 だがしかし、それはレーベックの予想を遥かに超えるものであった。あんな魔法を行使できる魔導師など、魔界だっていない。


 そしてもう一つ。≪剣聖≫以外の二人の学生が、思いの外実力のある者たちということだ。≪聖祈楽園(ヘルヴァライズ・ベルン)≫で身体能力、魔力が強化されていたとしても、並の人間はあそこまで戦うことなどできない。


 白髪の少女の広範囲氷魔法。あれほどのまでの魔法術式を一寸の狂いもなく、迅速に組み上げている。実践慣れしているとしか思えないほどのものだった。

 しかもあの青髪の少年の持つ黒い剣。どこかで見た覚えがあると、心にどこか引っかかるものをレーベックは感じていた。

 あの二人の学生も、中々の実力の持ち主と見ている。


 だからこそレーベックは、三人をそれぞれ孤立させて連携を取らせず、数の暴力で叩く作戦をとった。


「あれが三人をたった一人で片付けたっていう奴の魔力かい?」


 髭を生やした魔族だ。見た目は老けているように見えるが、その男から発せられる魔力はまさしく魔族全盛期のそれだ。


「キ……キキキ……」


 金属同士で擦り合わせたような声を発する、全身包帯で覆われた男。目元すら覆われていて、見えているかどうかすらも分からない。


「あぁ、全員気を引き締めろ」


「分かってますわよ」


 茶色の髪をお団子ヘアーにしており、口紅を塗って、露出度の多い紺色の服を身につけている女性が言った。


「ひっさびさに暴れちゃおうよ。ねぇ!」


 そう言うのは、小柄で大きな瞳を持って檸檬色の髪を持つ少女。見た目通り、子供のようにはしゃぐ姿はまさに天真爛漫だ。


 魔王十傑雄と呼ばれる五人の魔族は、≪剣聖≫と呼ばれる男の元へと、移動した。


* * * * * * * * * * * * * * * * *


 なるほど。

 左右に二割ずつ、そして中央に六割の兵士と魔王十傑雄がいるのを、俺は≪創始の聖眼≫を通して把握していた。


 この配置から見るに、最悪でも俺をここで足止めさせて、その間にセリナとシヴァを倒そうと作戦だろう。


 五つの魔力が最前線、俺の前へと姿を現す。

 

「魔王十傑雄がこうも早く現れるとは、そっちも相当焦っているようだな」


「まぁな。確かにお前は脅威だ。我が魔王が警戒するだけはある。だが逆に言えば、お前さえ倒してしまえばこちらの勝利は決定的だ。仲間も中々やるようだが、お前ほどの実力ではあるまい。魔王十傑雄五人と、まだ一万以上残っている我が兵士たち。さすがのお前も、そしてその仲間も死ぬだろう」


 レーベックたちはそう言って、戦闘態勢を取る。こちらを押しつぶすかのような魔力。木々は吹き飛び、大地は地割れを起こした。


「まぁ、悪くはない策だと俺も思うぞ。だが二つ。お前は間違ったことを言っている」


 俺は二本指を立てる。


「一つは、俺の仲間の実力を見誤った。それなりの評価はしてくれたようだが、まだ足りない。せめて魔王十傑雄を一人ずつあの二人にぶつけるべきだった。≪聖祈楽園(ヘルヴァライズ・ベルン)≫の恩恵を受けた二人ならば今頃は……」


 俺から見て、右方向から氷山ともいうべき氷壁がリューア森林を覆い尽くした。左方向からは研ぎ澄まされた、剣撃が飛び交った。


「もう既に、決着はついているだろう」


「おい!応答しろ!」


 通信係を務めていたであろう、魔界軍の一人がそう声を荒げる。


「何があった?」


 レーベックが尋ねる。


「右翼、左翼に回った通信係の魔族との通信が切れました……おそらく、既に全滅しているかと……」


 震えた声で、通信係の魔族は言った。

 

 ありえない、とレーベックはそう言わずにはいられなかった。七千の兵士たち、しかも日々鍛錬に打ち込んできた精鋭の兵士たちが、こんな短時間でやられるとは。


「終わったか?」


 ≪魔力経由通信(ロズア)≫で、シヴァとセリナに尋ねる。


「うん。なんというか思ったより手応えがなかったよ」


「こっちも今終わったわ。すぐ応援に向かう」


 二人とも余裕のコメントを残している。魔力の乱れもない。おそらく怪我も負っていないだろう。


「いや、しばらく二人はそこで……いや、そこから一キロ以上離れた所で待機していてくれ。魔王十傑雄ともなると、並の魔法では倒せん。だから少々本気で行く。もしかすればお前たちにもとばっちりが飛ぶかもしれないからな」


「分かった」


「えぇ」


 そう言って、シヴァとセリナは、今いる地点からさらに離れた場所へと移動する。


「へっ。どうやら仲間もかなりの強者そうじゃねえの。だがお前さんはもっと強いってことかい」


「ギ……ギ……ギギ……」


 魔王十傑雄第五位、ビルドルト・ガンテン。第六位、グラスネ・ガードナーは、魔法陣を展開する。


「ギギギ……!」


 耳障りな声を発すると、奴の身体から黒い鎖のようなものが飛び出し、俺を縛り付ける。


「その鎖は、人間や神々ほどよく効く封印術式が編み込まれた魔法だ。もう一歩も動けないだろう」


 ビルドルトは地面に手を当てる。俺の真下に魔法陣が浮かび上がると、黒い光線のようなものが放たれた。


「そんなもの防ぐまでもない。そのまま返してやる」


 その魔法陣を足で強く踏みつけると、魔法は逆流して使い主の元へと返っていく。ビルドルトが闇の光線を喰らうこととなった。


「ついでにこいつも邪魔だ」


 俺は絡みつく鎖を力ずくで解く。

 

「やるねぃ」


「ギギ……」


 闇の光線を返されたビルドルトも、そこまでダメージを負っていない。グラスネも封印魔法を破られたことに対して、そこまで気にしていない様子だ。


「確かに強いですね。ですが……」


 魔王十傑雄第七位、マーラ・エングは、第九位、ミール・カヴバの背中に手を当てる。魔力を流し込んでいるのだ。ミールの身体に膨大な魔力が宿る。


「ぶっっっっ潰しちゃうぅぅっっっっ!!!!」


 ミールがこちらに向かって飛び、右腕を振り上げる。その右腕は顔面に向けてーー


「え?」


 放った拳は、いとも簡単に受け止められたのだ。少女は可愛らしげな声を漏らす。

 俺は少女を軽々しく投げ飛ばした。その少女を、マーラはがっしりと受け止めた。


「バケモノが!」


 レーベックが吐き捨てるように言う。


「それともう一つ」


 ≪飛翔(フレノア)≫で上空へと飛ぶと、密かに組み上げていた巨大な魔法陣が浮かび上がる。


「たかが魔王十傑雄五人と一万の兵士で俺を止められると?笑わせる」


 魔法陣は白い輝きを放つ。

 前世で俺が生まれる数十年前ーー

 とある領土に、二度ほど白い雷が落ちた。一度目は領土を焼き払い、二度目で領土ごと消し去った。人界を襲った三つの巨大台風と、この白い雷は2大災害と呼ばれている。

 これはその古代術式を読み解いた古代魔法だ。


「≪白雷鳴王(リア・ジェネイラ)≫」


 怒りの雷が鳴り響く。

 空が割れたかのような感覚に襲われ魔法障壁を張る暇すら与えず彼らに直撃。


 魔界軍は地面に平伏すように倒れた。

まともな活躍もなく退場してしまった第二位……


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