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白フード

「どういうこと?」


 シヴァが尋ねてくる。≪解呪(シェル)≫は高位な魔法だが、現状はバルドの意識が戻らずにいる。そうなると、バルドに施されている呪いはかなり絞られる。


「悪いが、説明はあとだ」


 だが、バルドの瞳に浮かぶ複雑な魔法術式を見て、どんな呪いか分かった。だとしたらバルドが、≪強制魔力強奪(デグラシアス)≫や、≪深淵暗黒極絶(ディスティアス)≫を扱えるのかも頷ける。

 俄かに信じがたい話ではあるが。


「セリナ。聞こえるか?」


「ええ、聞こえてるわ。一体何が起きているの?」


「他のみんなも聞こえるか?」


「うん」


「おう!」


 それぞれ返事が返ってくる。


「バルドが何者かに操られている。俺とシヴァで奴を抑える。セリナは遠距離から攻撃を仕掛けてくれ。スピカたちは引き続き、≪聖祈楽園(ベルヴァライズ・ベルン)≫の発動、カジムとゼノンは、スピカたちの護衛を頼む」


「分かった」


「「おおっ!!」」


 それぞれに指示を出して、俺とシヴァはバルドと向き合う。まるで獣のように、バルドは歯をギリギリと噛んで、


「ぐごおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」


 轟くような咆哮を発した。


「奴の呪いを解く。いくぞ」


「うん」


 シヴァは地面を蹴った。

 バルドは≪炎拳(ジャファル)≫を両手に展開し、迎え撃つ準備をする。


「セィッ……!」


 シヴァはバルドの左脇腹から右肩へ抜けるように、斬りあげる。バルドはその斬撃を≪炎拳(ジァファル)≫で防ぎ、ノヴェンレビィアを掴む。


「離してもらおうか」


 魔力を込めた左足の蹴りを、腹に喰らわせる。  

 その衝撃で、バルドの手からノヴェンレビィアが離れた。そしてスッと左に移動する。そこには、セリナが魔法陣を描いていた。


「≪絶対零度(アンブレム・レノ)≫」


 草原全てを覆うほどの氷が出現する。辺り一面が白い世界へと変貌し、バルドをそこに縛りつけるかのように氷漬けにしようと襲いかかる。


「……があっ……!」


 バルドは魔法陣を展開する。≪大地崩壊(ゼオドロナ)≫の魔法陣だ。直後、大地が割れんばかりの地響きが起き、迫りくる氷を粉々に粉砕する。


「俺が……最強なんだっ……!!」


 バルドはそう呟いていた。

 ≪聖祈楽園(ベルヴァライズ・ベルン)≫によって、強化されている≪絶対零度(アンブレム・レノ)≫を防ぐとは。徐々にではあるが、奴の肉体が≪強制魔力強奪(デグラシアス)≫によって得た体力の魔力に馴染んできているのだ。

 

 バルドは、俺めがけて突っ込む。さきほどの≪深淵暗黒極絶(ディスティアス)≫といい、標的は俺のようだ。


 魔法陣を展開させると、右腕が目が眩むほどの白銀の輝きを放った。古代魔法≪白銀彗星(マギアド・ネビュラ)≫を右腕に纏わせたのだ。


「俺……より……強い奴が……いてはいけない……いてはいけないんだっ!!」


「ああ、お前は強い。身体能力、魔力はな。だが、その呪いをはね返せるほどの強い心までは持ち合わせていなかったようだ」


 俺の右腕は光速の速さで、バルドの鳩尾を捉えた。名付けるとするのなら、≪白銀閃光(マギアド・ゼラード)≫。


「ごおっ……があぁぁぁぁっっっ……」


 光速の速さで殴られたバルドは、空中へと吹っ飛ばされた。


「一気に決める」


 シヴァは飛び、ノヴェンレビィアをぐっと強く握りしめる。想いに応えるかのように、ノヴェンレビィアが淡い輝きを放ち、シヴァは目にも止まらぬ斬撃を繰り出した。


「……ぐふっ……」

 

 バルドの身体から鮮血が飛び散る。


「がはっ……」


 地面に叩きつけられたバルドは、苦しそうな呼吸を漏らした。


「≪雷電捕縛(エレクナ)≫」


「≪氷結世界(イルムレイン)≫」


 雷の鎖でバルドの身体は縛り上げられ、その上から凍てつくような氷で覆われる。

 セリナは≪氷結世界(イルムレイン)≫をバルドのいる方向へと集中させることで、威力を向上させたのだ。

 奴は抜け出そうと足掻くが、俺とセリナの魔法が重なっているのだ。いくら≪強制魔力強(デグラシアス)≫で強化していようと、抜け出すことは不可能だ。


 俺はバルドの目の前まで歩き、瞳に≪創始の聖眼≫を浮かばせる。


「ぐごぉっ!あ……がががっ……」


 ≪創始の聖眼≫を至近距離で見たバルドは、呻き声を漏らした。奴の瞳に浮かんでいる魔法陣が徐々に消えていく。それにつれて、バルドの呻き声も収まり出した。


「あ……ああ……」

 

 バルドの瞳から、魔法陣が完全に消えた。

 呪いは完全に解呪されたのだ。


「……っ……ここは……?」


 正気を取り戻したのか、バルドはおぼろげな様子でそう言った。


「魔法祭決勝の舞台だ。お前は誰かに呪いをかけられ、操られていた」


「……そうか……」


「何か覚えていることはあるか?」


「昨日の夜……一人で広場にいたことまでは覚えているが、それ以降を思い出そうとしても、何も思い出せない……」


 つまり昨日の夜以降に、何者かによって呪いをかけられたということか。しかも解呪された場合は、記憶が消去されるように施してある。よほど入念に準備をしてきたのが伺える。


 しかも、全ての攻撃を俺に向けてきた。バルドの俺に対する敵意と言われるとそれまでだが、どうもそれだけとは思えない。


 何故ならバルドの瞳に浮かんでいた、あの魔法陣はーー


「ふん。どれだけ時代が変わろうとも、所詮は人間だ。まるで使い物にならない」


 上空から異質な声が聞こえる。

 そこには白フードを被った何者かが悪態をつきながら、魔法祭決勝の舞台に、姿を見せていたのだ。

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