表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/108

弱さは罪なんかじゃない

 ≪紫竜舞突(ジルグラウノ)≫を喰らい、海へと落下していく生徒に、魔力の羽衣を着させ、反対側の島に飛ばしてやった。≪四帝≫の三人は、ダメージは負っているものの、致命傷とまではいかなかったようだ。

 ラドに施された≪魔力強化(マエンテ)≫による、強化された魔法障壁を展開したことによって、≪紫竜舞突(ジルグラウノ)≫を軽減したのだろう。

 彼らは即座に、≪治癒(エリエル)≫で負ったダメージを回復させていく。


「……っ……これだけの威力の魔法を……あんな広範囲でぶっぱなせるなんて……ふざけてやがる……」


「どうやらあれが……いや、あれこそが本来の≪紫竜舞突(ジルグラウノ)≫のあるべき姿なのかもしれないな」


「アーくんはやっぱり凄いねー。流石、私が見込んだ男」


 シェスタは乱れた服装を整えた。


「これで残るは≪四帝≫と、護衛だけだね」


 ≪千里眼(セルネフ)≫で状況を確認したシヴァは口を開いた。


「向こうが支援魔法なら、こちらも支援魔法で対抗する。スピカ、イジェル、ジェシカ、シルミー、ミラ、メリア。任せるぞ」


 彼女らの方を見ると何も言わず、静かに頷いた。五人が円を描くように、それぞれの配置につき、円の中心にはスピカが立っていた。彼女たちは、祈るように胸の前に手を組んだ。


「≪身体強化(アグマ)≫」


「≪魔力強化(マエンテ)≫」


「≪精神強化(セシーヌ)≫」


「≪治癒術式(ユーリス)≫」


「≪守護術式(インデュ)≫」


 そう言うと、彼女たちの中心に赤、青、黄、緑、白と鮮やかな光を放つ魔法陣が浮かび上がる。それらは円を描くように互いを繋ぎ合い、その力は中心に立つスピカの元へと集約する。


「…………」


 スピカの額から汗が滴る。五つの魔法陣は混ざり合い、目が眩むような輝かしい光へと変換していく。


「……なんだ……?見たことねぇぞあんな魔法……」


「どうやら、複数の支援魔法を同時使用しているらしいな」


「そんなことできるわけないのにね」


 そう言いながら、彼らは猛スピードでこちらに向かってきた。


「……っ……」


「敵を気にするな。今は魔法だけに集中しろ」


 彼女たちも敵がすぐ目の前にいることは感じ取っている。だが、不必要な雑念が混じれば、それは魔法にも影響を与える。一瞬の動揺を感じ取ったかのように、魔法陣が崩壊していく。


「ぁ……」


 スピカは情けない声を上げた。


「小僧っ!!待ってたぜっ!!オメェとの再戦をよぉっ!!」


 雄叫びをあげて、ディアスが≪炎拳(ジァファル)≫を繰り出す。大振りで荒削りではあるが、威力は申し分ない。俺は右手で、それを受け止めてやる。


「な……にぃ……!?」


 渾身の≪炎拳(ジァファル)≫を受け止められ、ディアスは動揺を隠せないでいた。俺は強引にディアスを投げつけた。


「……ぐぅ……ゴホッ……」


地面に叩きつけられ、苦しそうに咳き込んだ。スッと死角から、アレンが姿を見せた。その右手には細い刀身の剣が握られていた。


「悪いけど、あんたの相手は俺だよ」


 大地を抉るように蹴り、ノヴェンレビィアをアレンに振り下ろした。アレンは剣の峰を支え、ノヴェンレビィアを受け止める。強引に薙ぎ払い、シヴァは空中で姿勢を立て直し、着地する。


「アムルくん」


「ああ、そっちは任せるぞ」


「私もいること……忘れないでね。アーくん」


 シェスタが魔法陣を描いて、こちらに攻撃を仕掛けようとする。その前に、氷の矢がいくつもシェスタに向けて放たれ、魔法障壁を展開した。


「私がいることも忘れないでくださいね。先輩」


 美しい白髪をサラッと払って、セリナはシェスタを睨みつける。


「ふーん。まあ、いいや。アーくんと遊ぶ前に、あなたと遊んであげる……けど……」


 シェスタは魔法陣を描き、黒い球を出現させる。


「そこの支援魔法使いたちは、早急に退場してもらう」


シヴァと対峙していたアレンは、異空間からいくつもの小刀を取り出した。


「万が一支援魔法なんて使われたら、厄介だからなっ!!」


 ディアスは島一帯を覆い尽くさんと、≪業紅炎(ゼルファーナ)≫を放った。それは全て、スピカたちに向けて、放たれた。三方向から迫り来る攻撃に、彼女たちは身動き取れないでいた。


 俺は彼女たちに、最大強度の魔法障壁を展開してやる。彼女たちを襲う魔法は、魔法障壁よって阻まれて、消えた。


「おいおい……俺たちの一斉攻撃すら防ぐのかよ……」


 ディアスは驚愕したように、言葉を漏らした。


「アムル……」


 スピカが消え入りそうな声で、俺の名を呼ぶ。


「どうした?」


「ごめん……私たちのせいで……またアムルに負担を……」


 なんだ、そんなことか。


「気にするな。今失敗したのなら、次成功させればいいだけだ」


 彼女はフルフルと首を横に振る。


「無理よ。練習ですら、三割成功したぐらいなのに、本番でできるわけないじゃない!!」


 スピカだけじゃない。彼女たちもそう言った面持ちだった。


「シヴァ。セリナ。二人は引き続き、その二人の相手を頼む。もし、二人が隙を見てスピカたちに攻撃を仕掛けてきても、それは無視して構わない。俺が全部対処する」


 魔法で声を飛ばす。


「うん」


「ええ」


「カジム。ゼノン。二人で、あいつの相手を頼む」


 俺は空中にいるディアスを見上げた。


「お、おう!」


「任された!」


 幸い、この舞台は二人にとっては都合の良いステージだ。ディアスとて一筋縄ではいかないはずだ。魔法障壁を維持しつつ、俺は背を向けながら、彼女たちに話す。


「失敗をするのは怖いか?」


「うん……アムルや、シヴァは一つ星なのに、二つ星のみんなや、二年生とも互角に戦ってて……セリナは二つ星なのに、私たちと仲良くしてくれて、みんな強くて、どれだけ頑張っても追いつけないぐらい強くて……」


「強いか……。お前たちが思うほど、俺は強くないぞ」


「「えっ……?」」


 彼女らは驚いたように声をあげる。

 助けることができた命を、助けることができなかったし、自分の力不足で大切な人だって失った。一人は師匠だ。もう一人は……


「弱いことは罪なんかじゃない。そこから学んで、どうしていくかを考えることができれば人は強くなれる。弱いからと嘆いて、そこから何もしなくなった者こそ、本当の弱者だ」


 彼女たちを奮い立たせるように、俺は声を張る。その後ろ姿はまるで、世界を救った剣聖の姿そのもので、スピカたちは目を見開いた。


「言っていたな。みんなを少しでも、サポートしたいと」


 メリアがハッとする。


「その気持ちがまだ少しでも、残っているのなら、最後までやり抜け。何度失敗しても構わん。俺がお前たちを守ってやる」


 彼女らは立ち上がる。

 そしてもう一度、円を作った。


「≪身体強化(アグマ)


「≪魔力強化(マエンテ)≫」


「≪精神強化(セシーヌ)≫」


「≪治癒術式(ユーリス)


「≪守護術式(インデュ)≫」


 五つの魔法陣が浮かび上がり、円を形成。そして、スピカの元へと集約する。


 (弱いことは、罪なんかじゃない!)

 

 本来、交わることがなかった魔法同士が混ざり合い、それは虹色の輝きを放つ新たな魔法として生まれ変わった。


「「≪聖祈楽園(ヘルヴァライズ・ベルン)≫!!」」


 彼女たちが諦めず、支援魔法に向き合ったからこそできた、彼女たちにしかできない、新たな支援魔法が、今ここに誕生した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ