初陣
「各チーム、整列してください」
間に立つ教員が言う。セリナを先頭に、俺たちは横に並んだ。一方、二年生の方はラドが先頭に立っていた。ということは彼がリーダーか。見たところ、魔力は≪四帝≫の中ではダントツで低い。何か突出した点があるのかもしれない。
「この前みたいに、上手くいくとは思うなよ」
ディアスが太い首を鳴らしながら、闘志剥き出しな様子でこちらを睨みつけてきた。
「言っとくけど、アーくんの相手は私なんだから。邪魔しないでよね」
「おい、シェスタ。何を言っている。彼の相手は俺だ。一年であれだけ練り上げられた魔力。去年の俺たちに近いものを感じる」
「ざっけんな!俺だ!既に二回負けてんだよ!今すぐにでもやり返さなきゃ気が済まねぇ!!」
誰が俺と戦うかを巡って、言い争いをしていた。
「止めなくていいのか?」
「彼らはいつもこんな感じさ……」
ラドは無機質な目を浮かべながら、眼鏡をクイっと押し上げた。
「アムルくんって人気者なんだね」
まるで他人事のように、あっけらかんとシヴァは言った。こちらとしてはいい迷惑なんだがな。
「早速、≪四帝≫の姿を拝めるとはな。一年生であれだけの実力だったんだ。二年生になり、もっと実力をつけているに違いない!!今年はもしかすると、もしかするぞ!!」
「そんな≪四帝≫の相手をするのは一年生で……しかも一つ星かよ!!こりゃ魔法祭史上、最速で試合が終わるかもな!!」
相変わらず、観客席からヤジを飛ばす連中がいた。とりあえず、ヤジを飛ばした奴らの顔は覚えておくとしよう。
「それでは、魔法祭の舞台となるステージに転移を開始しますっ!」
アナウンスの声が響き渡る。「オォーッ!!」と修練場の盛り上がりを見せた。≪転移≫の魔法が発動し、魔法祭の舞台へと飛ばされた。
転移が完了する。俺たちは、小さな島に立っていた。
「ここは……海?」
セリナが首を傾げる。辺り一面海景色が広がり、俺たちの反対側に、同じ面積の島があった。
「それでは、陣地決めを行ってください」
アナウンスの声が届く。
「陣地……と言っても、どちらも変わらないけど……どっちにする?」
「じゃあ、向こうの島で」
≪飛翔≫で、俺たちは向こうの島へと向かった。
「どうしよう。凄く緊張してきちゃった」
「な、ななな、情けないな!し、しょうがない、俺が先陣をきってやりゅうよ!」
島に着いて宝玉を設置すると、彼らはソワソワした様子でそう言った。大きく深呼吸を何度も行うが、一向に緊張が取れないのか、女性陣は少し震えているように見えた。そして、男性陣は嚙み噛みであった。
「みんなあれだけ特訓したじゃない。絶対大丈夫よ。自信持って」
「セリナ……」
セリナは不安に襲われる彼女らに優しく声をかける。
「それでは、魔法祭一回戦、第一試合開始っ!!」
アナウンスの声と共に、反対側に浮かぶ島が淡い輝きを放つ。≪創始の聖眼≫で目を凝らすと、ラドが魔法陣を描いていた。魔法陣の光が、班員に纏い魔力を増幅させていく。
ラドは後方で味方の支援か。確かに宝玉の側を離れられないリーダーにとって、この力は有効だ。支援魔法は、使用者の魔力が枯渇したり、戦闘不能になった時点で効果を失ってしまう。ラドと護衛役の生徒一人を残して、他の生徒はこちらの島に向かった。
「さて、どうしようか」
こちらに向かってくる二年生を見つめながら、シヴァは口を開いた。
俺は歩を進めて、右手を天にかざした。
「ちょっと。何するつもり?」
「なに、ほんのちょっと軽い挨拶をするだけさ」
そう言って魔法陣を描く。その魔法陣はみるみる拡大していき、紫電を走らせていた。雲一つない青空は、あっという間に暗雲が垂れ込める。
友人たち、そして面識はないとはいえ、同じ一つ星の生徒を罵倒したのだ。観客共の度肝を抜くほどの魔法を見せてやろう。
「八つ当たりになって申し訳ないが、少々本気でいくぞ。二年生ならばこれぐらいは防いでみせろ」
魔法陣から紫電を帯びた竜が、十体出現し、空が、大地が、怯えるかのように震えていた。≪紫竜舞突≫は落雷の如く、二年生に向けて、放たれていった。
ーー俺が≪紫竜舞突≫を放つ少し前の出来事。
ラドを除いた≪四帝≫を先頭に、二年生は悠然とした様子でこちらに向かっていた。
「しかしラドのやつも慎重だな。一年生、しかも一つ星なんかに支援魔法を使うなんてよ。気いつけりゃいいのは、あいつだけだろうがよ」
「いや、彼の他に二人。一年にしては中々の魔力の持ち主がいた。彼らも注意すべきだろう。他の一年生は、まあ予想通りといったところだ。その三人さえ倒してしまえば、問題ない」
アレンはそう分析をした。
「そんなことより、早くアーくんに会いたいなー」
シェスタは嬉しそうに、そう言葉を漏らしていた。
「ああ、あの人と戦う前のいい準備運動になりそうだぜ」
ディアスは拳を作って左手でパシッと鳴らした。アレンも深呼吸をして、集中力を高めていた。
すると、彼らの頭上に大きな魔法陣が浮かび上がった。
「おいっ!あの魔力っ……!」
「ああ、どうやら彼の魔法のようだ。あの魔法陣は、フェルシルザ家相伝の魔法、≪紫竜舞突≫だ。この程度なら……」
彼らは飛行しながら、浮かび上がる魔法陣を見上げていた。紫紺の眩い輝きが放たれると、膨大な魔力量が彼らを襲う。
「ど、どうなってやがる……!?魔力がどんどん増してねぇかっ!?」
「しかも本家の≪紫竜舞突≫のより、何倍……何十倍もの魔力反応だと……!?」
「これ、まともにくらったらやばくない……?」
紫電の竜は、動揺を隠せないでいる彼らに容赦なく襲いかかる。咄嗟に、魔法障壁を展開するが、
「うぐ……ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」
≪四帝≫以外の生徒の魔法障壁は、まるで紙切れのように、呆気なく消滅して≪紫竜舞突≫が直撃して気を失い、そのまま落下していった。
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