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模擬戦

 魔法祭一週間前ーー

 俺たちは、第一修練場に集まっていた。

 そこには、俺たちの他に生徒の姿もあった。リエルの隣には他の教師の姿もあった。


「魔法祭まで、残り一週間を切りました。本日は二年生と合同で魔法祭の模擬戦を行います」


 隣には白の法衣に身を包んだ女性がいた。年齢はリエルと同じくらい。赤茶色の髪にお団子ヘアーが印象的な美女だ。


「一年生のみんなは初めましてよね。ローゼ・セールレアです。二年生のクラスを担当しているわ。よろしく」


 彼女が軽く自己紹介を済ませる。二年生のクラスが騒がしくなった。


「おい。あいつらはどこいった?」


「知らね。気づいたらいなくなってた」


 リエルも何やら二年生の方をキョロキョロと見渡している。誰かを探しているようだ。


「ローゼ先生。あの四人は……」


「彼らはサボりよ。やる気が起きないからって……。

それにもう一人はまだ学院にすら来ていないわ」


「またですか……」


 ローゼは頭を抱えながら、深く溜息を漏らす。セリナも苦笑いを浮かべた。


「仕方ないわ。彼ら抜きで模擬戦を行いましょう」


「そうですね」


 二人はそう言って頷いた。ローゼは二年生の方に目にやって、


「みんな、今日は九人一組で模擬戦を行うわ。悪いけど、チームを作り直してもらってもいい?」


「はーい」


 ローゼの指示に二年生は返事をした。


「なあ、その四人っていうのはどんなやつらなのか知ってるか?」


 俺は気になってスピカに尋ねた。 


「去年の魔法祭。一年生にも関わらず、その四人だけでチームを準優勝に導いたほどの実力の持ち主達よ。その姿を見た観客は、彼らに敬意を込めて『四帝』と名付けたそうよ」


「去年テレビで見てたけど、衝撃的だったよな!」


 カジムが話に入ってくる。


「一年生で準優勝というのは凄いのか?」


「うん。そもそも魔法祭っていうのは二、三年生のために用意されたもの。有望な生徒を発掘するために、魔導師団の人たちも結構くるし。自分たちの力を誇示するためにはうってつけな舞台なわけだ」


「一年生は一回勝てれば上出来だって言われてたのに、その一年生が準優勝したんだもの。それは話題にもなるわ」


 人間には身体的な成長期があるとともに、魔力の成長期というのも存在する。個人差はあるが、一般的な成長期は男女問わず、十七から十九と言われている。

 つまり、二年生時から魔力の成長期を迎えるということだ。


「それじゃあ、先鋒は……」


 リエルは一年生の方を見て言う。


「僕たちからいいですか?」


 ゼイスがスッと手を挙げて前に出る。瞳からはやってやろうという意思が伝わってくる。


「構わないよね?」


 確認するかのように、ノアと俺の方を見た。


「ああ」


「勝手にすればいいわ」


 俺は頷き、ノアはぶっきらぼうに言った。


「それじゃあゼイスくんの班はここに残って。他のみんなは観客席に移動してくれる?」

 

 二年生の先鋒も決まり、そうでないものは観客席に移動を始めた。ゼイスは大きく息を吐き、真っ直ぐ前を見つめた。


「まあ、そんなに固くならないでよ。模擬戦なんだから緩くやろうぜ。緩く」


 ゼイスの様子を見た二年生の生徒が穏やかな声音で声をかける。模擬戦とはいえ、とても戦う前とは思えない気の抜けた表情だった。


「お気遣いありがとうございます。しかし、そんな心持ちだと足元を掬われるかもしれませんよ」


 彼らの心を読み取ったかのように、ゼイスはキッと睨みつける。


「おー。怖い怖い。模擬戦の前に軽い交流を図りたかっただけなんだけどなー」


 生徒は気にしていないかのようにケロっとした表情を浮かべていた。ゼイスたちの身体が光に包まれる。

 しばらくして、舞台にいるゼイスたちが≪転移(ゲイラス)≫によって飛ばされる。模擬戦の様子は、修練場のテレビジョンによって映し出されていた。

 辺り一面砂漠が広がっており、太陽がジリジリと彼らを照らしていた。さきほどの生徒がゼイスに声をかける。


「陣地。好きな方をとりなよ」


「では、北側で」


 ゼイスが選んだ北側には、半壊した古代遺跡がいくつかあり姿を隠すにはちょうどいい。


「じゃあ、僕らは反対側で」


 そう言って、彼らは自身の陣地に向かった。ゼイスたちもゆっくりと歩き出す。


「ゼイスくんの班は勝てると思う?」


 隣で観戦していたセリナが言った。


「さあな。人数的な有利はあると思うが」


 ザッザッと砂場に足を取られることなく、二年生は歩みを進める。


「クジャル。あいつ、すごく生意気だったな」


 一人がゼイスに話しかけた生徒、クジャル・エデストアに言う。


「ああ。確かに先輩に向ける目じゃなかったよね。少し教育してやる必要があるね」


 先ほどまでの温厚だったような声とは一転して、冷たい声でそう言った。

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