表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/108

シヴァの家

 その後は、主に体力強化の授業となった。

 俺とシヴァを先頭に、セリナ、そして一つ星の生徒たちが懸命に食らいついていた。二つ星を見返すと言い切っただけあって、見上げた根性だ。 

 授業が終わり、生徒たちの顔は死んでいた。


「き……きつかった……」


「こんなのやってたら死ぬだろ……」


 と、泣き言を言っていた。


「お疲れ」


 俺はセリナに声をかけた。頬から伝う汗を拭う。


「慣れればなんとかなるものね」


 他の生徒に比べ、余裕がある様子だ。魔法に対しての適応能力が高いのだろう。シヴァはセリナの先を行っているがな。シヴァは依然として爽やかな表情を浮かべており、汗一つかいていない様子だった。


 レンナは一歩前に出る。


「体力はないが、根性はあるみたいだな。これからは、体力強化中心の授業になるから全員覚悟しておくように」


 ポケットから新しい棒飴を取り出し、それを口に含む。そして第一修練場から姿を消した。


 レンナの授業が終わってから、リエルの魔法学の授業が行われたが、ほとんどの生徒は先程の授業の影響か、意識が飛んでいたようだった。


「アムルくん。ちょっといい?」


 放課後、シヴァが声をかけてきた。


「どうした?」


「このあと暇?ちょっと付き合って欲しいんだけど」


「ああ、いいぞ」


 俺とシヴァは学院を出た。


「どこに行くんだ?」


「俺の家」


 シヴァは≪飛翔(フレノア)≫を使う。俺もシヴァのあとを追った。向かったのは、王都フェルメイトの遥か先、深い森に囲まれながら建てられている一軒の家だった。木造式の家で、周りには畑が広がっていた。


「ただいまー」


 シヴァはドアを開く。


「アムルくんも中に入ってよ」


 シヴァに促され、俺も家の中に入った。そこには二人の人物がいた。年齢は七十◯歳を超えている老夫婦だ。二人は座りながらこちらを見ると、優しく微笑んだ。


「おかえり。その子は……?」


「おじいちゃん、おばあちゃん。紹介するよ。僕の友達、アムルくん」


 シヴァは嬉しそうに俺を紹介する。


「……この子が……シヴァの言ってた?」


「うん。面白いやつ」


「そうか……そうか……」


 お爺さんはゆっくりと立ち上がりこちらに向かってくる。そして細く、シワシワな手で俺の肩に置いた。


「これからもシヴァと仲良くしてやってくれ」


 力強くそう言った。


「ああ、分かった」


 老夫婦と軽く会話を交わした後、シヴァと俺は縁側で休んでいた。


「おじいちゃんとおばあちゃんにとって、俺は本当の孫じゃないんだ」


 シヴァが話を切り出す。


「おじいちゃんが、一人山で歩いていると赤ん坊の俺がいたんだって」


 我が子を捨てるというのは、珍しいケースではない。本来、子供というのは父と母の力を半々、どちらかの力をそのまま受け継ぎ生まれるというケースがほとんどだ。

 しかし、例外がある。それは父と母の力を全く受け継かず、力を持たない状態というケース。両親の力をそれ以上に受け継ぐという二つのケースだ。

 前者は両親にとって、その子供は恥さらしと同義だ。後者は子供のあまりの強大な力に、両親が嫉妬、もしくは恐怖を抱いてしまうことがあり、捨ててしまうことがあるようだ。

 俺の両親は、お互い魔力をほとんど持たないにも関わらず、俺が生まれたことに対して、恐怖どころか愛情を持って育ててくれた。その点に関して、俺は恵まれていたというべきだろう。


「襲われても怪我を負わないよう、魔法で保護されてたらしいんだけどね。最後の親心みたいなものだったのかな。それと、こんなものも置かれていたんだって。ちょっと取ってくるよ」


 シヴァは立ち上がり、どこかへと向かった。しばらくするとシヴァは一本の剣を持ってきた。黒い鞘に収まっている。


「僕自身、この剣を抜いたことはない。なんか抜いたらいけないような気がしてね」


 シヴァは苦笑いしながら言った。

 この剣は確か……。


「アムルくん?」


 剣をじっと見つめたまま動かない俺を見て、シヴァは尋ねてくる。


「すまない。どこかで見覚えのある剣だと思ったんだがな」


「もしかしたら、どこかで見ているのかもしれないね」


 シヴァは持ってきた剣を置く。


「シヴァは昔から剣が得意なのか?」


「得意っていうか、師匠の剣技を見よう見まねでやってるだけなんだ。師匠っていうのも俺が勝手に言ってるだけなんだけど」


「その師匠が、直接指導してくれるわけじゃないのか?」


「うん。僕はただ、ずっと見ているだけだったよ。当時は話したこともなかったから」


 見るだけで師匠の剣技を模倣できるシヴァも凄いが。なるほど、シヴァの強さは師匠のおかげというわけか。一度手合わせをしてみたいものだ。


「師匠が今どうしているのかは知らないのか?」


「そうだね。昔の出来事だったたし、もしかしたら死んじゃってるかもしれないね」


 シヴァはそう言いながら、立ち上がり、畑の方に向かっていく。収穫にはまだ少し早いくらいの野菜たちが実っていた。シヴァは畑を近くにある倉庫を開き、何かを取り出した。木製の剣だ。見た目は粗く、手作り感が漂っていた。


「おじいちゃんが作ってくれたんだ。それで師匠の剣技を思い出しながら、剣を振ってた」


 シヴァは剣を軽く振る。ヒュン!っと鋭く空気を切り裂く音が響き、風圧がこちらまで届いた。


「ほら、アムルくんも」


 シヴァは木製の剣を俺に手渡す。


「アムルくんって……剣使うの上手い方?」


「まあな」


 伊達に剣聖と呼ばれてきていないからな。カリュエヴァマに選ばれるには、相当な剣技も必要とされるのだ。


「へぇ。ならいずれ、君と手合わせをしてみたいよ」


「そうだな。することがあるなら、本気でやらないとやられてしまうな」


 俺はシヴァに手渡された木剣を握り、振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ