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イメチェン

 休みが明けて、俺はフェルメイト魔法学院に向かっていた。道中でセリナがいつも通り、俺を待っていた。

 

「おはよう」

 

「ああ、おはよう」

 

 白い髪が風に靡く。セリナは髪を手で抑える。まるで白い妖精。いや、セリナのどこか大人びた雰囲気と実力を考えると、魔女という表現の方が適切だろうか。そんなことを言っては、セリナに怒られるだろうから、胸の中にしまっておこう。


「セリナ。あの時言った言葉はどう言う意味だ?」


 俺は尋ねた。セリナは首を傾げる。


「なんのことかしら?」


「先週の帰り道に言ってただろ。私のこと守ってねと。あの言葉の意味を聞いている」


「……私、そんなこと言ってないわよ?」


 まるで分からないと言った様子で言った。セリナの様子を見るからにして、どうやら嘘はついていないようだ。


「覚えていないのか?」


「アムルと帰ったのは覚えてるわ。でも……ごめんなさい。やっぱり覚えていないわ」


 キッパリと言い切った。


「ていうか私。そんな恥ずかしいこと言ってたの?」


 セリナは頬を赤らめる。 

 覚えていない……か。だとすれば誰かがセリナを通じて、俺に伝えてきたのか。

 転生前に聞いたことがある。強い意思を持って命を落としたものは、それを成し遂げるために自分と似た魂に憑依するだとか。半ばオカルト染みた話ではあるがな。

 身に覚えのない台詞に恥ずかしがってるセリナを見ながら、二人で学院に向かった。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


 教室に入ると、何やら黒板に書かれてあった。

 新しい座席表らしい。一つ星と二つ星で、ひとまとまりに固められていた。席の固定はなく、決められた席の中ならどこでもいいといったスタイルだ。きっとリエルの配慮だろう。机も一人用机から、長机に変わっていた。


「なんか、教室の雰囲気が変わってて新鮮だね」


 背後から声が聞こえ、振り返るとシヴァが立っていた。


「おはよう」


「シヴァくん。おはよう」


「セリナさん。今日も綺麗だね」


 邪な気持ちなど感じられないような、至って普通の様子でシヴァが言った。


「あ、ありがとう」


 急に言われ、びっくりした様子でセリナが応じる。


「席が自由ならアムルくん。君の隣で受けたいんだけど……いいかい?」


「ああ、構わないぞ」


「助かるよ。授業聞いてるだけで、頭が痛くなってね。分かりやすく解説してくれると助かるよ」


「まずは自分で考えろ。自分のためにならないからな。それでどうしても分からないところがあれば、俺に聞けばいいさ」 


「それより私。みんなと離れ離れになるんだけど」


 セリナが困ったような顔をして、聞いてきた。


「一つ星のみんなと授業受けたいのか?」


「だって、二つ星は自慢話ばっかでつまんないよ。みんなといた方が楽しいし」


 セリナは、さも当然だと言わんばかりに言った。


「いいんじゃないか。見たところ、席も余っているだうし、特に問題はないだろう」


 リエルに相談すれば、なんとかしてくれるだろうしな。それに、一つ星のみんなも喜ぶだろう。

 俺は近くの席に腰掛ける。右隣にシヴァ。左隣にセリナが座った。


「なんでセリナさんが一つ星の席に座ってるんだよ」


「脅されてるんじゃないのか?」


 などと外野の声が聞こえるが、当然スルー。セリナから言ったほうが早いんじゃないかと、目で訴えるが、セリナは全力で首を横に振った。どうやら彼らとはどうしても馬が合わないようだ。

 生徒らも続々と教室の中に入ってくる。気が合う仲間と隣で授業を受けられることに喜んでいる一つ星の生徒とは対照的に、二つ星の生徒は不満そうな表情を浮かべていた。おそらく、マウントを取れる相手がいなくなったことが原因なのだろうが、そんなことをして何が楽しいんだろうか。理解に苦しむ。


 チャイムが鳴り響き、リエルが教室に入ってくる。一つ星の生徒らが何やら騒めき始めた。


「はいはい、静かにしてください」


 リエルがそう注意をするが、静かにはならなかった。隣にいるセリナとシヴァも驚いたような顔をしていた。

 髪を切っていたのだ。腰まであった長い髪は、バッサリと切られていてショートカットに。ウェーブをかけているため、ボリューム感を出している。今までのリエルとはガラリと印象が変わっていた。


「先生。髪切ったんですか?」


「え、ええ。その……似合ってない……ですか?」


 理知的な赤い瞳を開き、不安げに首を傾げる。

 その反応に男子生徒たちは、胸を打ち抜かれているような様子だった。


「とても良く似合っていますよ。先生」


 俺の隣に座っているセリナが笑顔で言う。


「ありがとうございます。セリナさん」


 リエルも安心したように、ホッと胸を撫で下ろした。セリナがここに座っていても文句を言わなかったのだ。特に問題はないのだろう。

 二つ星の生徒は、リエルが一つ星に肩入れをしていることを不満に思っているようだが、リエル以外の教員は全員貴族で、二つ星の味方に付いているのだ。それぐらいは目を瞑ってもらわないと困る。


 教室内が落ち着いたのを確認し、リエルが口を開く。


「授業を始める前に、今年の魔法祭について簡単に説明しようと思います」


「魔法祭?」


 セリナが首を傾げる。


「セリナさんは今年、留学されたばかりでしたので知らないのも無理はありません。では、改めて魔法祭について説明します。魔法祭というのは、一年から三年まで全員参加の学校行事のことです。各チーム十◯人。一クラス四十◯人なので四組作って、トーナメント方式で戦っていくと仕組みとなっています」


「えー。でもそれじゃあ、上級生の方が有利になっちゃうじゃないですか」


 一つ星の生徒が言うと、リエルがクスッと笑う。


「個人の戦いならそうですが、これはあくまでチームで戦うものです。仲間と力を合わせ、協力し合えれば、上級生とだって十分に渡り合うことができますよ」


 なかなか楽しそうなイベントじゃないか。ベイラムの件もあったことだし、その魔法祭とやらは、盛大に楽しむとしよう。

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