ベイラムの本性
昨日投稿できなかったので、今日の6時過ぎくらいにもう1話投稿しようと思います!
少し前のことーー。
「ん……」
金色の光が差し込み、意識が覚醒する。ぼやけた視界で、セリナは辺りを見渡した。
「嘘……」
そこには、一つ星の生徒、そしてリエルが意識を失ったまま、横たわっているのだ。
「先生!起きてください!」
一番近くにいたリエルの元に駆け寄り、身体を揺らす。しばらくして、リエルも目を覚ました。
「良かった。無事だったんですね」
「……セリナさん。なんでこんなところに?」
「分かりません。気がついたらここに。それにみんなも……」
リエルが一つ星の生徒の方を見る。
「みんな!」
リエルとセリナはそれぞれに声をかける。程なくして、全員が目を覚ました。全員に目立った外傷はなく、気を失っていただけらしい。
「ここは……地下?魔法結界の魔力源の場所のようですね」
リエルが辺りを見渡し先に進むと、金色に輝く一つの魔力結晶だけがあった。
「なんでこんな場所に俺たちは……。確か手紙の言う通り、三十◯分早く学院に来て廊下を歩いてたら……」
「手紙?」
カジムの発言に、リエルが首を捻る。
「え?リエル先生が出したものじゃないんですか?俺たち全員持ってますよ」
カジムがその手紙をリエルに見せる。セリナや他の生徒らもその手紙を出した。
「こんな手紙。私は出してませんよ」
リエルは困惑しながらも否定する。
「じゃあ、誰が……」
コツコツと足音がこの地下内に響いた。誰もが、その足音に意識を向けられる。ゴクリと唾の飲むような音が聞こえる。その足音が近くなるにつれて、この正体も露わになっていく。
「その手紙を出したのは……私ですよ……」
気怠そうな声で、ベイラムは暗闇から姿を見せた。
「ベイラム先生……」
「な、なんでこんなことするんですか!?」
生徒の一人がベイラムに問う。
「この喋り方は……疲れますね……」
前髪を流し、鋭い目を向ける。一つ星の生徒は後退り、セリナとリエルも額から汗を流した。
「そうだな……。あえて言うとするのなら……害虫駆除……とでも言うべきだろう」
顎に手を当てしばらく考え込み、言った。
「害虫駆除ですって……?」
「ああ……。この学院にある……ありとあらゆる膿を排除し、新たな学院へと生まれ変わらせる。これはその始まりに過ぎん……」
「聞き捨てなりませんね」
リエルはベイラムの目の前まで向かい、見上げる。二人の身長差はまるで親子のようだが、リエルはベイラムのような鋭い目つきをしていた。
「彼らは立派な生徒です。彼らを害虫呼ばわりしたことを訂正してください」
「害虫だ……。我々貴族……。二つ星こそこの学院、強いてはこの国を支え、導くのだ……。貴様らのような……。ただのうのうと生きているだけの弱者など……この世には必要ない……」
「それは違います!貴族だけで成り立つ世界なんてありません!貴族と国民が手を取りあって、どうやって国を豊かにするか、知恵を出し合ってそうやって国は!世界は成長していくんです!」
リエルは声を張り上げ反論する。
「黙れ……。そもそも貴様のようなやつが教員をやっていること自体、おかしいことなのだ……」
「先生を侮辱するんじゃねぇよ!」
ゼノンが足を一歩前に踏み出して、言った。
「先生は、俺たち一つ星だろうと親身になって話を聞いてくれるんだ!あんたのような凝り固まった考えを押し付けてんじゃねえよ!」
「ふむ……」
ベイラムが言葉を漏らすと、ゆっくりとゼノンの方へと向かった。
「な……なんだよ……」
「貴族に反論した罰だ……。まずは貴様からだな……」
そう言うと、ゼノンの腹に膝蹴りを入れた。
「ガハッ……」
堪らず声を漏らし、膝から崩れ落ちた。息苦しさから逃れようと、必死に酸素を取り入れようとする。ベイラムはゼノンの髪の毛を掴み、強引に持ち上げる。
「ちょうどいい……。力を持たない弱者が……強者に歯向かうとどんな目に遭うか教えてやる……」
ベイラムはゼノンを投げつける。壁に叩きつけられたゼノンは、その衝撃で意識を失った。
「ゼノンくん!」
セリナはゼノンの元に駆け寄り、回復魔法を使おうとする。しかし……。
「魔法が……使えない?」
「ここは既に私の領域……。ありとあらゆる結界が張り巡らされている……。ありとあらゆる魔法を封じ、誰も助けに来ることもない……。貴様らはここで命を落とす……」
ベイラムは次の標的を誰にするか、目を向ける。一つ星の生徒らは足が震えていた。『死』という恐怖が身体を強張らせているのだ。
「待ちなさい」
リエルが前に立ち塞がる。ベイラムは苛立ちを見せた。
「どけ……」
「いいえ。退きません。生徒を守るのが教員である私の仕事です」
「く。くくく。この状況でもなお、教員であろうとするとは……その心意気だけは褒めてやろう……」
込み上げる笑いを必死に抑えて、ベイラムは言った。
「一つ聞きます。一つ星を排除するのは分かりました。だったら何故、セリナさんもこの場にいるんですか?彼女は正真正銘、二つ星の生徒ですよ」
「簡単なことだ……。奴は二つ星にも関わらず……一つ星と仲良くしているようだからな……。あれは二つ星の恥だ……。排除して構わない……」
「恥などではありません。誰とも隔てなく接することができるのは、立派な強みです」
「その口……いい加減黙らせる必要があるな……」
ベイラムは魔法陣を展開する。
「なっ……!ありとあらゆる魔法を封じるはずじゃ」
リエルは驚愕したような表情を浮かべた。
「自身の魔法を……封じる訳がなかろう……」
ベイラムは至近距離で≪紅炎≫を放った。魔法障壁も展開できないこの場で、まともに喰らったリエルはその場で地面にひれ伏した。
「次は貴様だ……。セリナ・アークネルド」
ベイラムはセリナに標準を定める。
「おおおああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」
カジルが絶叫ともとれる雄叫びを上げながら、ベイラムに突進していく。ベイラムは深い溜息を吐き、魔法障壁を展開した。
「ぐぅ……」
「小蝿が……。黙っていろ……」
カジルを弾いた魔法障壁を飛ばし、それごとカジルを壁に叩き付けた。一つ星の生徒は、セリナの元に集まり、ひとかたまりになっている。
「すぐ楽にしてやる……。そのままじっとしていろ……」
ベイラムが足を踏み出そうとすると、それをさせまいとリエルが手を伸ばし、掴んでいた。
「いか……せませんよ……」
ベイラムは足元を見下ろし、軽蔑するようにリエルを見た。
「あいつらを片付けた後……貴様を殺して……アムルを殺す……。そして貴族だけが生きる世界を作るのだ……」
「なかなか面白いことを言うじゃないか。ベイラム」
この場にいるはずのないはずの声が聞こえ、ベイラムは顔を上げた。セリナたちの前に俺が立っているのだ。セリナたちを守るように、俺は立ち塞がった。
「ば……馬鹿な……。場所が分かったとしても……ここに侵入することなど不可能だ……。どうやって、どうやって……」
「随分と派手にやってくれたな」
ドスを効かせた声で俺は言い放つ。壁に横たわっているゼノンとカジル。ベイラムの足元で全身ボロボロにしているリエル。彼らは身を挺して、彼女たちを守ってくれたのだろう。
「昨日、≪隠蔽≫で廊下にいたのはお前だな?もっと魔力を潜めろ。バレバレだったぞ」
何故分かったのか?と今にも言いたげな表情を浮かべていた。なんとも情けない面だ。
「なら、俺があの場で言ったことを覚えているな?」
俺は息を吸い、言った。
「先生を、俺の友人の悪口を言うだけでは飽き足らず、ここまでやってくれたんだ」
俺から溢れ出る魔力に、ベイラムは堪らず後退りをする。
「ただで済むとは思うなよ。ベイラム」
氷のように冷たい声が、この辺りに響いた。
アムルの逆鱗に触れてしまったようです!
本気のアムルの実力は!果たしてベイラムの運命は!
そしてヒロインなのに、ヒロインらしいことを全くできていないセリナの運命は?




