深まる謎、リエルの涙
皆様のおかげで100ポイント到達しました!
ありがとうございます!
これからも皆様に楽しんでいただけるように頑張って更新していきます!
……そろそろ感想とかくれてもいいのですよ?(チラリ)
ベイラムが教室を去り、教室の空気は重苦しい雰囲気になっていた。教員と手を組み、一つ星に恥をかかせようという魂胆だったのだろうが、見事に返り討ちに合ってしまい、彼らは何も言えない状況になってしまった。これも自業自得なんだがな。
「き、今日の授業はここまでです。皆さん気をつけて帰ってください」
突然の出来事に、さすがのリエルでも動揺を隠すことはできなかったようだ。ベイラムの後を追うかのように、リエルも教室から出て行った。
「アムルくん。さっきはありがとう」
イジェルが俺のもとまで歩き、礼を述べた。
「魔法結界と≪結合術式≫、≪融合術式≫はきちんと理解できたか?」
「うん」
「良かった。何か分からないところがあったら、いつでも来い」
俺は柔らかく微笑んだ。
「あ、ありがと……」
イジェルはそう言って、そそくさと戻って行った。なにかいけなかったか?本人も説明が分かりやすいと言ってたし、笑顔で応じたはずなのだが。学院生活もなかなか難しいな。
俺は立ち上がり、教室を出る。
長い廊下を歩いていると、職員室の近くから若い女性の声と、淀みがある男性の声が聞こえた。
「間違い……ない……。あの一つ星こそが……魔王だ……。私が知らない魔法まで……奴は知っていた……。あの知識量は……魔王以外の他ならない」
どうやら俺のことを話しているようだ。しかし、何を馬鹿なことを言っているのだ。俺が魔王だと?
「ベイラム先生。彼を侮辱するのは辞めてください。それと、一つ星の生徒らに対する態度も改めてください。彼らだって、魔法学院の生徒なんですよ!」
リエルは珍しく声を荒げて、反論する。
「ではリエル先生は……彼を何者と申す……?たかが一つ星で……あれだけの知識を……持っていることなんてありえない……」
「彼は魔法学院一年、アムル・シルフィルクです。それ以上でも、それ以下でもありません!」
ベイラムは気怠そうに、ポケットからパイプを取り出し、それを吸う。煙を吐き出して、ベイラムは細い目をリエルに向ける。
「あの一つ星が……この学院に入学した数日で……魔族の動きは……さらに活発化している……。それは魔王が人間界に、潜入できたから……」
「考察は勝手ですが、彼に、一つ星のみんなに対する嫌がらせは許しませんからね」
リエルの声音には、怒りがこもっていた。
「ふん……」
鼻を鳴らし、ベイラムは職員室に入った。
リエルはハアッっと深い溜息を吐き、窓から景色を眺めた。
魔族の動きが活発か。それは人間界に攻め込んでいる、もしくは攻め込む準備をしているという捉え方で間違いないだろう。
だが、何故だ。俺は人間と魔族の記憶を消し、互いを認め合う存在と認知させる魔法を、俺自身の命を代償として使った。だが、今のベイラムの発言からするに、魔族は憎むべき存在という考え方だ。だが保険として、バハルには争いが起きないようにと頼んでいた。
バハルが裏切ったのか?考えにくいが、今はその線が最も濃いと言わざるを得ない。
俺は一階にある図書室に足を運んだ。
魔法からフェルメイトの歴史のことまで、本棚にズラリと並んでいる。小さい頃に、歴史の書物を読んでいたがもしかしたら見落としをしていたのかもしれない。俺は一つの分厚い本を手に取り、目をやる。ペラペラとページをめくっていった。
ーー魔族は敵だ。我ら人間の穏やかな生活を脅かす、憎き存在だ。後世は、このことを絶対に忘れてはいけない。
一つ星と二つ星の差別、貴族同士の対立、それに加えて、魔族と人間の争いか。最初の二つはさて置き、問題は何故、魔族と人間間で争いが起きたかだ。俺の魔法が効かなかったか、強引に解いたか。それが人間か、魔族か。とにかく不確定要素が多すぎる。時間をかけて、探っていくしかない。
俺は本を閉じて、元に合った場所へ戻し図書室を後にした。俺は教室に戻るため、階段を登った。そこには、リエルが近くにある椅子に座っていた。
「まったく、なんであんな奴が教員になったんですかね?」
「さあ。確かに優秀ですが、あくまで延長戦に過ぎませんから。貴族であるこちら側に来ることはありませんよ」
俺の近くを過ぎ去る二人の教員が、口を開く。
精神が未熟な生徒なら百歩譲って許せるが、いい年した大人が、陰口を言って差別しているのだ。一体どこから、こうなってしまったのやら。
俺はリエルのいる所に向け、歩く。
「アムルくん」
リエルは無理に笑顔を作るが、表情は疲れ切っていた。
「大丈夫か?」
「生徒に心配されるなんて、私は教師失格ですね」
「普段からあのように陰口を言われているのか?」
「いつものことですから」
リエルの美しく赤い瞳には、潤んでいた。
「セリナも言っていただろう。困ったことがあれば、なんでも相談してくれと」
「生徒に変な心配はかけなくないんです」
一つ星の生徒らにとっての道標になる。それがリエルの教員としての信念だ。だが、道標になるということは、一番前に立つということ。彼らを降りかかる理不尽から守るということ。
心の拠り所がなければ、精神が壊れてもおかしくない。
「変な心配をかけて何がいけないんだ?」
「え?」
リエルが驚いたような声を漏らす。
「誰にでも悩みはある。それを一人で背負ってしまえば潰れるぞ。まあ、心の強さにもよるが。大切なのは相談することだ。誰かに悩みを聞いてもらえれば、心にだって余裕ができる。道標になるからといって、誰かに頼ってはいけないということはないんだ。教員に相談できる相手がいないんだったら、生徒に愚痴を言えばいい。俺やセリナ。一つ星の彼らだって、親身になって聞いてくれるはずだ」
リエルの赤い瞳の潤みが溢れ出る。それは頬を伝い、リエルの着衣に落ちた。≪隠蔽≫で俺とリエルの姿を見えないようにした。
「安心して好きなだけ泣けばいい。辛かったこと、悲しいこと、悔しいこと。全て吐き出せ」
「……すみません。少し、肩を借りてもいいですか?」
「構わない」
リエルは俺の肩に顔を埋める。
しばらくの間、リエルは子供のように泣いていた。
ー
ーー
ーーー
しばらく泣き続け、落ち着きを取り戻したのかリエルは目尻に溜まった涙を拭う。
「すみません……」
「弱音を漏らすことも、人前で涙を見せることも、恥ずかしいことじゃない」
≪隠蔽≫を解く。
「先生。ベイラム……というより他の教員は、昔からあのような振る舞いなのか?」
「はい。この差別は、私が学院に入学する前からずっと続いています」
「そうか」
この学院での生活で、貴族と貴族でないもの。そこには確かな溝があることは分かった。だが、あそこまで一つ星を毛嫌いするものか?やはり自分より地位の低いものが、同じ場所にいるのが嫌なだけなのか?
俺は立ち上がった。
「落ち着いたのなら、俺はもう帰る」
「ありがとう。アムルくん」
リエルは赤い瞳を俺に向ける。
「さようなら」
笑顔を見せてそう言うと、職員室の中に入っていった。
追記
内容を一部付け足しました。
次回の投稿は明日にします。




