学院の地下に眠るもの
都合上、この時間の投稿となりました!
翌朝ーー
フェルメイト魔法学院。
教室に入ると、二つ星の生徒らの姿があり、ゼイスとノアもいた。
あれだけのダメージを負いながらも、たった一日でここまで回復するとは。医療も進化しているのだな。しかし、やけに静かだな。いつもであれば、自慢話やらなんやらと騒がしいのだが。
一つ星の生徒らが固まって話しているのが見え、俺は彼らの元に向かう。
「アムルくん、おはよう」
「ああ、今日は何やらしんとしているな」
一人の生徒がボソッと小声で教えてくれる。
「たぶん、散々馬鹿にしてきた私たちに負けて、何も言えなくなったんじゃないのかな?」
ああ、なるほど。確かに、一つ星の奴らの顔を見ると、これ以上ないほど屈辱に染まったような顔をしている。それにこちらとは、一切目を合わせようとはしない。目が合ったらキッとこちらを睨みつけられる。負けて悔しいのは分かるが、そこまで邪険にする必要もないと思うのだが。
「まぁ、静かに過ごせるのも悪くはないな」
俺が席に戻ろうとすると、
「アムルくん。今日、私たちと一緒にご飯食べない?」
三つ編みをした女子生徒が口を開く。彼らは、いつも一つ星で固まって昼食を食べているな。
「も、もちろん嫌だったら無理に一緒に食べる必要ないよ!でも、もし良かったらなって」
「いや、そうさせてもらおう。みんなとの仲を深められるいい機会だ」
「本当に!」
一つ星の生徒たちは、嬉しそうに喜んでいた。
「ああ、むしろ誘ってもらって嬉しいよ」
俺は女子生徒に優しく微笑む。彼女はポッと頬を赤らめ、俯いてしまった。
「おはよう。どうしたの?」
少し遅れて、セリナが俺たちの元に来た。
「ちょうどいい。セリナも仲間に入れても大丈夫か?」
「ちょっと、なんの話をしているの?」
勝手に話が進んで、訳も分からないセリナは俺にムッとしたような表情を見せる。
「アムルくんと一緒に、みんなで昼食を食べようという話をしていたんです。もし、宜しければセリナさんも一緒にどうですか?」
三つ編みの彼女は、セリナに尋ねた。
「……私も行っていいの?」
「はい。もちろんです」
彼女は微笑む。
「なら、行きましょう。場所は大食堂でいいのよね?」
「そのつもりですが……」
「分かったわ。午前の授業が終わったら、大食堂へ向かいましょう」
セリナは表情を変えず踵を返し、自分の席に向かった。
「私、偉そうなこと言っちゃったかな……」
自身の発言に問題があったか心配そうにする彼女に対して、
「いや、逆だ」
「え?」
表情を変えまいと頑張っていたようだが、口角は少しだが上がっていた。頬も赤らんでいたし、何より魔力の流れが早くなっていた。
緊張していたり、嬉しいことがあると普段身体に巡るの魔力の流れが早くなる。セリナはまさに、その状態だったのだ。全く、少しは素直になればいいのだがな。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
予鈴のチャイムが鳴り、リエルが教室に入った。
「今日は授業を始める前に、案内したいところがあるのでそこに向かってから授業を行います。私についてきてください」
突然の指示に、生徒らは戸惑いを見せながらもリエルの後ろをついた。
階段を降り一階へ。廊下の突き当たりを曲がると、そこは行き止まりだった。
リエルは壁に触れて魔力を流し込むと、壁に≪隠蔽≫の魔法陣が浮かび上がる。ただの壁が姿を変えて、一つの扉となった。
「まさか、こんな場所があったなんて」
「全く気がつかなかった……」
≪隠蔽≫は姿、魔力ともにその場から消す魔法だ。並の魔導師では辿ることもできないだろう。
リエルは扉を開け、先に進む。そこは地下へと続く螺旋状の階段があった。俺たちはその階段を降りていく。階段を降り先に進んでいくと、目の前に金色に輝く部屋が見えた。そこには、
「なんだこれ……」
生徒が思わず言葉を漏らす。広い空間に、一つの巨大な魔力結晶がある。その結晶の中心には、一本の剣があった。その剣の神々しい輝きが、魔力結晶を金色に光らせているのだ。
「ここは、学院を守るための魔法結界の魔力源となっている場所です。この魔力水晶の中心に眠る剣の魔力が、学院内に循環し続けることで、常時魔法結界を展開し続けることができます。今はこの魔法学院のみに展開されていますが、魔法結界の効力を弱めることで、魔法結界の範囲が広がることが可能となり、王都フェルメイト全てを覆いつくせるまでに範囲を広げることができます」
リエルは分かりやすく説明をしてくれる。
目の前に広がる光景に、生徒らは口を開けて見ることしか出来なかった。
「なんで今日、ここを案内してくれたんですか?」
近くにいたセリナが言う。
「学院のことをもっと知って欲しいと思ったからですよ。今日これで、学院内に張り巡らされている魔法結界について、学習できましたね」
リエルは俺たちに優しく微笑む。
だからといって、今日教える必要もないはず。何か他に理由でもあるのか?
「さて、では教室に戻りましょう」
リエルは手を叩き、そう言った。
生徒らは目の前に聳え立つ魔力水晶、そして金色の剣を目に焼き付けるように見て、この場を去っていく。
「アムル。私たちも行きましょう」
「ああ」
セリナに促され、俺も階段へと向かう。
色々と気になるところはあったが、それ以上に収穫もあった。俺はもう一度、魔力水晶の方に目をやった。
「こんなところにいたのか。カリュエヴァマ」
俺は一人呟く。魔力水晶の中心にある神創剣カリュエヴァマは、俺の呟きに呼応するように、刀身を輝かせ反応した。
三〇〇年の時を経て、再び出会った相棒……。




