決着
仕事の関係上、この時間の投稿になってしまいました!すみません!
今週はずっとこの時間帯での投稿になると思います!
俺がゼイスを連れて、セリナと別れた場所に戻ると、辺り一面氷の世界となっていた。ゼイスの時よりさらに強力な魔法を放ったのだろう。
既にリエルはその場に立っていた。
「この対抗戦。一つ星の勝ちとします」
二つ星の生徒の半数とノアは凍らされ、ゼイスは≪紫竜舞突≫をまともにくらって、今も気を失っている。あとは、シヴァの方なのだがーー。
噂をすれば、シヴァが≪飛翔≫でこちらに戻ってきた。
「あっちにいた二つ星の生徒は、全員倒したよ」
柔らかな声音でそう言った。数十人を相手をしていたにもかかわらず、何やら物足りなさそうな表情を浮かべていた。シヴァは手に持っている白銀の剣を俺に差し出す。
「アムルくんが作ってくれた剣のおかげだよ」
「何を言う。お前の実力だ。俺はお前に合った剣を作り出したに過ぎない」
シヴァの実力はかなりのものだ。実際に戦いを見たわけではないが、彼から滲み出ている魔力がそれを物語っている。
俺はセリナの方に目をやる。さすがに魔力を使い過ぎたのか、疲労が窺えた。
「大丈夫か?」
「問題ない……って言いたいけど、少し疲れたかな……」
セリナは苦笑いを浮かべながら、大きく息を吐く。セリナが指を鳴らすと、生徒たちを覆っていた氷が消えていく。彼らは膝から崩れ落ち、恐怖に染まったような表情をしていた。
氷に閉じ込められる経験をするとは思っていなかっただろうし、何もできないこと、このまま凍死してしまうのではないかという考えが頭をよぎったのかもしれない。
だが、ノア・レーズネットだけは違った。唇を噛み、掌を物凄い力で握りしめていた。
完全な敗北。自身の魔法が一切通用せず、完膚なきまでに打ちのめされ、これ以上ない屈辱が、ノアを襲っていた。
「まだ……負けてないわ。私は……まだやれる……。勝手に決めつけないで」
ノアはリエルの方を見て言った。
ノアの身体は既にボロボロだ。立っているのもやっとの様子で、肩で息をしている。普通であればとっくに気を失っているダメージを負っているはずなのだが、それでも立っているのは自身の持つプライド。それだけだ。
ゼイスもそうだったが、こんな状況でもノアの目は死んでいない。むしろ今まで以上の闘志を感じた。
ノアもゼイスも同じ相当な負けず嫌いということか。こんな目をする奴は必ず強くなる。俺はノアの前に立つ。
「今度はあんたが相手ね……。いいわ。かかってきなさいよ……」
ノアは右手をかざし、魔法陣を展開しようとする。こんなところでこれだけ魔法の才を持つ人間が潰れるのは惜しい。俺は指を伸ばし、彼女の額に触れた。
「な、何して……んの……よ……」
ノアは顔を赤くして抵抗しようとするが、意識を失ってしまい倒れそうになる。俺はノアの華奢な身体をスッと持ち上げる。
軽いな。セリナもそうだが、こんな小さく、細い身体であれだけの魔法を扱えるのだ。転生前の時代の女性がセリナやノアほどの魔法を使える女性はいなかった。時代とともに、人間も進化しているのだな。
「ノアは先に学院で休ませたほうがいい」
「そうですね」
リエルに言うと、魔法陣を展開する。≪召喚≫の魔法だ。
使用者が見たことのある動物を、自身の魔力で複製するものだ。それ自身に意思は存在せず、使用者の命令のみに従うため、かなり使用率が高い魔法とも言える。魔法陣からは黒い毛皮に覆われたイヌ科の動物が姿を見せた。
「彼女を学院まで」
俺はその動物の背中にノアを乗せる。
リエルの指示に頷き、学院に向けて走り出した。
「アムル」
セリナが俺の名を呼ぶ。
「勝ったわね」
「ああ」
「これで彼らは、少しは俺たちのことを認めてくれるだろうか?」
シヴァがそう口にする。
「いや、それはない」
一度負けたくらいで、あいつらは変わらない。今までそう生きてきたのだから。あいつらに、一つ星の存在を認めさせるには、これからも勝ち続けなければいけないのだ。
だが、今日くらいは浮かれてもいいだろう。
「今回の対抗戦、誰か一人でも欠けていれば、今日の結果はなかっただろう」
セリナ、シヴァ、一つ星の生徒らがこちらを見つめる。
「一つ星でも二つ星に勝てる。今日でそれを証明できた。だから、自信を持って魔法学院に通うがいい」
蔑まれ、ぞんざいな扱いを受けてきた彼らは、相当悔しい想いをしていたのだろう。だからこそ、今日「勝利」という目に見える結果が欲しかった。彼らが魔法学院の生徒でいられるために。
俺は大きく息を吸って、言った。
「今日は、俺たちの完全勝利だ」
そう言うと、一つ星の生徒の歓声が、この森全体に響いた。




