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女は化粧の仕方一つで化けるって本当らしい

 翌朝ーーー。

 リンダ組以外の面々は、食堂で朝食を取っていた。

 今日の朝メニューは、フレンチトーストにスクランブルエッグ、サラダにコーヒーだ。

 因みに、俺はブラックコーヒーが飲めない。砂糖とミルク派だ。

 まあ、そんなことはどうでも良いが、今日の予定は、昨日はリンダの一件で先延ばしにした王都観光である。

 キムの話では、やはり王都にしか無い珍しい物品などもあるらしく、それらを見て回るだけでも結構楽しめるのだとか。

 今から期待で胸が踊る。

 イーダムは、今日は一人でブラブラしてみるそうだ。


「それにしても、あの三人組遅いね?」

「まあ、いつものことだろ?化粧に時間食てっるんじゃないのか?」


 リンダ達は、毎朝メイクに余念が無い。

 俺達の前に出る時は、常にきっちりとしたメイクは欠かさないのだ。


「そうかもね。ねえねえ、所でさ……」

「ん?」


 キムが隣テーブルの椅子から身を乗り出して聞いてくる。

 俺と従魔達は同じテーブルだが、キムとイーダムはすぐ隣のテーブルで朝食を取っていたのだ。


 俺は、軽く首だけを動かして返事をする。

 何故か、キムの細い目が爛々(らんらん)と輝いてる…………ように見えた。


「昨日、何か事件があったみたいだね?」

「は?事件?」


 キムが、唐突にそんなことを聞いてきた。


「まったまた~。しらばっくれちゃって。昨日、リンダ達と何かあったんだろ?」


 相変わらず情報が早いな。

 イーダムの方は、何の話か分からずキョトンとしていた。

 キムが聞きたいのは、当然リンダと元彼貴族の話だろう。


「さあ?何のことだか俺にはさっぱり」


 俺は、キムの質問を知らぬ存ぜぬで答えた。

 もしかしたら、キムのことだから本当は詳しい事情が既に耳に入ってるかもしれない。

 けれど、噂話は大体が尾ひれが付くものだ。

 なら、本人の口から直接聞いた方が確実だろう。

 だからと言って、俺の口から話すことは何も無かった。

 これはリンダの問題であって、俺が面白半分に吹聴して良いことでは無いと思ったからだ。


「ちぇ……残念」


 口ではそう言うものの、キムも俺の考えを察してか、それ以上深く追求してこようとはしなかった。

 それからは、取り留めない話をしながら食事が終盤を向かえた頃、食堂脇の階段から人が降りてくる気配がした。

 俺は何気無くそちらに視線を向ける。

 階段から降りてきたのは、デラムとチョウと、それから…………リンダだった。

 やっと降りてきたかと思い、三人を一度目に止めてから、特に気にすることなくすぐに視線を正面に戻し、最後の一欠片のフレンチトーストを口に運ぼうとして…………俺はピタリと手を止める。

 そして、勢い良くもう一度三人に顔を向けた。


「…………………………」


 俺は間抜けにも、ポカンと口を開けたまま固まる。

 フレンチトーストが、手から滑り落ちて皿に逆戻りした。


「んん?あれって……リンダ?」

「は?いや、ただの他人の空似だろ?」


 キムもリンダ達に気付くと俺と同じ反応で、目を(しばたた)かせながら信じられないものを見る目で、リンダを見遣る。

 イーダムは、目の前の現実を直視出来ないと言わんばかりに、有り得ないと首を振っていた。

 三人は真っ直ぐに俺達の席へと近付いてくる。


「お、おはよう……」

「……へ?あ、ああ。おはよう……」


 リンダは少し照れた様子で、節目ながちに挨拶をしてきた。

 俺は、呆けたままに反射的に挨拶を返す。


「は?え?まじでリンダなのか?!」


 そこで漸くイーダムも、目の前に立っている女性がリンダだと認識する。

 ガタリと椅子から立ち上がると、驚きを露わにした。


「これは……また……どう言う心境の変化なわけ?」


 キムも戸惑いを隠せないでいた。

 俺達が何故こうまで動揺してるかと言うと、そこに居たのはリンダであってリンダではなかった。

 もっと正確に言えば、昨日までのリンダとはかけ離れた姿だったのだ。


 リンダは、あれ程太くしっかりかかれてた平行眉が薄く緩やかなカーブに変わり、キラキラしたラメが入ったゴールドブラウンのアイシャドウも、ブラウン系に変わっていた。

 ブラックのアイラインが太めに書かれ目尻からハネ上がっていて、ツリ目がちになっていたのが、細く自然な流れでハネ上がり、おっとりとした印象を受ける。

 上睫毛と下睫毛に付け睫毛をつけてマスカラをガッツリ盛っていたのも、今は付け睫毛はつけてなく、マスカラで軽く上向きに上げてるだけにすぎない。

 オレンジ系のチークを頬の横から内側に楕円形に濃いめに塗られていたものが、頬骨辺りにピンク色のを気持ち程度乗せてる感じだ。

 真っ赤な口紅も、薄いオレンジ系に変更しており、その上にグロスを塗ってるようだった。


 つまりは何が言いたいかと言うと、昨日までのコテコテのメイクとは真逆の、落ち着いた雰囲気の女性がそこには居たのだ。


 女性……と言うか、リンダなんだが…………リンダだよな?


 俺達男三人組は、ただ呆然とリンダをマジマジと見てるだけしか出来なかった。

 すると、俺達の反応が希薄だったせいか、リンダは不安そうに瞳を揺らしながら、俺に聞いてきた。


「ど、どうかな?やっぱ……変?」

「え?あ……いや、変じゃないです……」


 俺は何故か敬語になってしまう。

 気の利いた言葉一つもかけてあげられず、それだけを言うのが精一杯だった。

 けれど、リンダはそれだけで嬉しそうにはにかむ。

 その笑顔さえも、昨日までの印象とは大分違って見えた。

 化粧が変わるだけで、これ程まで雰囲気がガラリと変わるとは思わなかった。

 俺はおずおずと、リンダに尋ねてみた。


「えっと……何かあったのか?その……メイクがいつもと違うんだが……?」

「何かって言うか……昨日あんたが言ったんじゃない」

「ん?俺?何か言ったか?」


 リンダがそう言うので、俺は昨日のことを思い返してみるも、何も思いあたる節がなく首を傾げる。

 すると、リンダは少し頬を染めがらも、その驚きの答えを口にした。


「昨日、あんたがギャルが苦手だって言うから、化粧を変えてみたのよ?」

「…………へ?あ……」


 俺は、そこで漸く思い至る。

 確かにそんなことを言った記憶はある。確かに言ったには言ったが……。


 だからって何でそうなる?!

 そもそも諦めたんじゃなかったのかよ?!

 どんな解釈したらこうなるんだ?!

 俺は付き合うつもりはないってちゃんと言ったぞ!!

 確かに化粧で言えば、今の方が断然良いが…………いやいや!!問題はそこじゃないから!!


 俺は心の中で盛大に突っ込む。最早、何処をどう突っ込めば良いか分からない。


「ははは……」


 もう俺は乾いた笑みしか出なかった。何とも言えない微妙な表情をする。


「「へえ~……」」


 キムとイーダムの視線が痛い。二人が何かを聞きたそうに俺を見てきた。

 俺はそんな二人の視線から逃れるように、ソロソロと最後の一欠片のフレンチトーストを口に放り込むのであった。


ギャルメイク………………何それ?美味しいの?


ギャルメイクの仕方が分からなかったので、ギャルメイクとナチュラルメイクをネットで調べてみましたが……余計分からなくなった馬鹿な作者でふ 汗汗

なので、ギャルからおっとり系に様変わりしたのだと、皆様が無理矢理脳内で変換して下さると助かります 笑笑

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