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女のバトル勃発?!

「お願い!!助けて!!」

「は?」


 チョウが俺を見つけるや否や、腕にしがみ付いて開口一番にそんなことを言ってきた。

 俺は訳が分からず混乱するばかりだ。


「えっと……何があったんだ?」


 俺は一応聞いてみたが、チョウは気ばかり焦って、説明も後回しに俺の腕を引っ張る。


「と、兎に角来て!!お願い!!」


 とは言え、俺も男だ。チョウの力では俺はびくともしなかった。

 それでも、チョウの尋常じゃない慌てように、俺は自らの意思で足を動かす。

 チョウは俺を引っ張りながら、俺を街の中心部の方角へと誘った。


 こっちは確か、貴族街だったか?


 キムから大雑把に聞かされた話では、王城を中心として、その周りを貴族が住む家が立ち並んでいるのだとか。

 一般人は、基本そこには近付かない。

 けれど、チョウは確かに貴族街へ真っ直ぐに突き進んでいた。


 暫く歩くと、広場のような場所に出た。

 中央に噴水があり、何故かその近くに人だかりが出来ていた。

 チョウはそんな人混みなどお構い無しに、人垣の中をずんずん進んで行く。

 俺もチョウに倣って人垣を割って入る。

 そうして、俺達が最前列に出ると、人だかりの中心に三人の女性と一人の金髪男が居た。

 その内の女性二人は見知った顔で、リンダとデラムだ。

 金髪男の方は、噴水の縁に脚を組んで座って、その顔には嫌らしい笑みを浮かべていた。


「……何やってんだ?アイツら」


 リンダは所々傷だらけで、地に膝をついていた。

 デラムは、そんなリンダを傍で心配そうに見ていた。

 俺が首を傾げてその様子を眺めていると、チョウが泣きそうな顔で俺に懇願してきた。


「お願い!!何とかして?!」

「何とかしろと言われてもな……」


 俺は頭を掻いて困惑する。

 いまいち状況が理解出来ないのに、第三者が安易に介入して良いのか、判断に迷う所だ。

 すると、もう一人の……知らない女性が、高笑いをしてリンダを嘲るのが耳に届いた。

 その女性の手には、何故かレイピアが握られていた。


「オーホッホッホ!そろそろ諦めたらどうかしら?」


 本当にあんな笑い方する奴いるんだな……。


 俺はどうでもいいことに感心してしまう。

 そして、金髪男も笑みを浮かべたまま、リンダに侮蔑的な言葉を投げ掛ける。


「そうだぞ?これ以上醜態晒したくもないだろ?」

「まあ、貴女にはそうやって地べたに這いつくばるのがお似合いですけども!」


 リンダが悔しそうに唇を噛む。

 周囲の者達も、ただクスクスニヤニヤ笑っているだけだ。

 ここで一つハッキリしたことは、何故こんな状況になったのかはさて置き、リンダが見世物のような状態にさせられていると言うことだった。


 さて、どうしたものかな。


 俺が止めに入るべきか思索していると、リンダが男の方に向き直って言った。


「…………どうして?約束してくれたじゃない。Aランクに上がれば、結婚してくれるって……」


 は?結婚?


 突然飛び出した単語に、更に俺の頭は混乱した。

 リンダは泣きそうな顔で金髪男を見詰める。

 そんなリンダにも、金髪男は鼻で笑うだけだった。


「お前、Bランクにもなってないだろ」

「っ?!それは……」


 金髪男の言ってることは尤もだ。

 リンダは、Aランク所かBランクにもまだなってはいないのだから……。

 その事実を突き付けられて、リンダは言葉を失くす。

 そこまでならまだ良かった。

 詳しいことは分からないが、金髪男とリンダの間の約束に、『Aランクになったら結婚する』と言うのが交されたのなら、それを守れていないリンダの方にも問題がある。

 俺が口を挟むべきではないだろう。

 だが、金髪男が発した次の言葉に、俺の顔が険しくなる。


「それにな、大体そんな約束守るわけないだろ?お前みたいなブスとさ!!」

「な?!」


 ピクリーー。


 その言葉に、俺の眉が上がる。

 約束を反故にした挙句、女性に対してブスなどと言う暴言を吐くなど、男の風上にも置けない。

 俺は、リンダを決してブスなどと思ったことはない。

 確かに、俺が苦手なギャルではあるが、世間一般的には美人に入るのではなかろうか?


 リンダも、その言葉にショックを受けたようだった。

 顔面蒼白で、体は小刻みに震えていた。

 そんなリンダに対して、更に金髪男は続ける。


「それから、少し考えれば分かるだろ?お前と俺とじゃ釣り合うわけないって。地位も顔も何もかもが、お前と俺は違うんだよ!これだから馬鹿は嫌なんだ!!」

「おほほ!可哀想な子。一回生まれ直してらっしゃいな」

「そんな……」


 リンダの眦に、徐々に涙が溜まっていく。

 周囲の野次馬も、ただ嘲笑しているだけだ。楽しんでいるのが見て取れる。

 そろそろ、俺も我慢の限界だった。

 自分で言うだけあって、金髪男は美男子だ。

 異世界王道の金髪碧眼で、目鼻立ちもしっかりしており、180センチメートルくらいはありそうな長身で足もスラっとしていて、やはり何処と無く気品も感じられた。

 まあ、口を開けば全てが台無しであるが。


 そんなに見た目が大事だと言うなら、此方にも考えがある。

 最早、理由などどうでも良い。

 俺はチラリと、隣に居た見知らぬ女性の“頭”を見た。

 目元を隠していた長い前髪を掻き分け、俺は笑顔でその女性に徐に話し掛ける。


「すみません。そのカチューシャ、少しの間貸して頂けませんか?」

「え?…………あ!はははははい!!」


 女性は、一瞬呆けた顔をするが、すぐに我に返ると、動揺しながら俺にカチューシャを貸してくれる。


「どうも有難う御座います」

「……………………はい」


 俺がもう一度ニコリと微笑み掛けて礼を言うと、女性は口を開けてポケーとしていた。

 俺はそんな女性を無視してカチューシャを頭に付けて前髪を上げると、リンダと対峙している女の元に歩み寄った。


「失礼。お嬢さん」

「はあ?なに、よ…………」


 俺が女に呼び掛けると、女は振り向きざまに俺に食ってかかろうとするが、けれどその言葉が続くことはなかった。

 女は俺の顔をマジマジと見ていた。


「お楽しみ中大変申し訳ないのですが、彼女は僕の大切な友人なので、そろそろその辺で勘弁して頂けませんか?」


 俺は女に微笑みながら、胸に手を当てて軽く頭を下げる。

 出来るだけ物腰柔らかく。嫌味にならない程度に。紳士的に。

 女が俺に見蕩れているのが分かった。

 彼女だけでなく、周囲に居る何人かの女性が、俺に釘付けになっていた。

 リンダとデラムとチョウも、口をポカンと開けて言葉を失っている。


 俺は、普段は目元を前髪で隠しているが、俺の瞳は青と緑のオッドアイだ。

 顔も……自分では良く分からないが、それ程悪くないと思う。

 これでも、一応小学校中頃までは結構モテていた。

 けれど、“ある事件”がきっかけで、俺はこの瞳と自分を隠すようになる。

 それが根暗と言われ、虐めの理由にもなったわけだが……。

 それに、俺はこの瞳も顔も大っ嫌いなのだ。

 何故なら、“あの男”を彷彿とさせるから……。


 この瞳がこの世界でも通用するか心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。

 黒髪にオッドアイは、女性から見たら神秘的に見えるらしい。

 ここら辺は、万国(世界?)共通なのだろうか。


 女は暫く放心していたが、ハッと我に返り、慌てたようにレイピアを背中に隠すと、頬を染めて俺に向き直る。


「お、お楽しみだなんて!そんな人聞きの悪い……わたくし、それ程性格は悪くなくてよ?」

「そうですか?それは大変失礼致しました」


 嘘付け!!

 完全に悪役令嬢さながらの台詞だっただろうが!!


 そう心の中で思うものの、そんなことはおくびにも出さずに、努めて紳士的な対応を心掛けた。


「では、彼女達を連れて行っても宜しいですか?」

「え?ええ!!勿論ですわ!!」

「は?おい!何を勝手な……」

「うっさいわね!!」

「んな?!」


 金髪男が、女の予想外の変貌ぶりに戸惑いながらも文句を口にしようとするが、女はそれを凄い形相で一蹴する。

 女から思いもよらない剣突(けんつく)を食わされ、金髪男は口をあんぐりと開けて固まってしまった。

 俺はそんな二人を余所に、リンダの元に近付く。

 リンダは、俺が傍に寄っても微動だにしない。

 俺は軽く溜め息を吐くと、リンダの腕を引っ張って無理に立たせると、そのまま引き摺るように連れて行った。

 カチューシャも女性に返し、前髪を戻して目元を隠すのも忘れない。

 デラムとチョウは、そんな俺の行動を見て、慌てて俺達の後を追ってきた。


 俺達は宿屋に戻ると、リンダを椅子に座らせ、俺はベッドに腰掛けて腕と脚を組んで、リンダを睥睨しながら一言言った。


「で?説明して貰おうか?」

主人公がまさかのイケメン?!

作者もビックリですね!!←おい (笑)


いずれ、主人公の過去も明らかにしていくつもりです。

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