銭湯でドキドキハプニング
俺達は宿屋にチェックインすると、慌てたように宿屋を後にする。
リンダ達は、暫く放心状態だったのを、無理矢理引き摺るように宿屋に連れて来た。
それから、我に返ったリンダとデラムとチョウは、寄る所があるとかで、荷物を置くと俺達より先に出て行ってしまった。
イーダムとキムは、王都巡りをするらしい。
イーダムは王都は初めてなので、キムに案内をして貰うのだとか。
俺も後でキムに案内を頼むつもりだが、まずは先にやるべき事がある。
「ここか……」
俺と従魔一行は、先程アルさんから教えて貰った銭湯の前に立っていた。
その造りは、まさに昔ながらの木造建てで、周りとの景観があまりにミスマッチしており、かなり違和感があった。
けれど、俺の心は高揚していた。
ウキウキした気分で早速中に入ろうとすると、それをキラリに呼び止められてしまい、出鼻をくじかれてしまう。
「マスター!これこれ!」
何か興奮したようなキラリの声に、何だろうかと俺は振り向き、キラリが指差した方に目を向ける。
銭湯の入り口の立て看板には、こう書かれていた。
『貸切り混浴!!応相談!!』ーー。
従魔達が、きらきらした瞳で、俺に何かを訴え掛けてくる。
「…………いや、無いからな?」
「「「「えー?」」」」
俺が呆れながらそう言うと、陸までもが揃って、俺に抗議の視線を向けて来た。
いやいや!!普通に無理だろ?!
俺を殺す気か!!
四人と一緒に入ったら、ゆっくり風呂を堪能出来ないことは間違い無かった。
俺は、ブーブー文句を言ってる四人を尻目に、さっさと暖簾を潜ることにした。
中に入ると、更に俺の心は踊る。
そこはまさに、日本の銭湯そのものだった。
もしかしたら、日本人が作ったのでは?と思わせる程だ。
ちゃんとロッカーも完備しており、木で出来た長椅子に、何処からか涼しい風が吹いてくる。
何かの魔法でも仕掛けてるのだろうか?
おそらくは、扇風機代わりだろう。
それに、硝子のケースには、瓶に入ったミルク・コーヒー牛乳・いちご牛乳までもがあった。
何とも手の込んだことか。
「いらっしゃいませ~。御一人様ですか?」
俺が銭湯に見蕩れてると、番台に座っていた、少し小太りのおばちゃんに声を掛けられた。
「あ、いや。外に後四人女性が居る」
「そうですか。こちらでまとめてお支払いで宜しいですか?」
「ああ」
「では、御一人様小銀貨一枚ですので、小銀貨五枚頂きますね」
俺はおばちゃんに言われるがまま、小銀貨五枚を取り出し渡した。
「はい!毎度~。ごゆるりとお寛ぎ下さいな!」
快活良い笑顔で、おばちゃんがそう言ってくれた。
俺は逸る気持ちを抑えながら、ロッカーの所へ行って、いそいそと服を脱ぎ捨てた。
ロッカーにも、ちゃんと鍵が備わっており、貴重品管理も徹底されているようだ。
俺はタオルを取り出すと腰に巻き、いざ、風呂場の扉を開けた。
「……………………」
その光景に、俺は唖然とする。
いや!!これ絶対日本人関わってるだろ!!
風呂場を見て、完全に俺は確信してしまった。
何故なら、通常風呂に掛け湯ーーまあ、これならまだ分かる。
だが、他にバイブラ湯ーー浴槽内の下部から気泡が湧き出し、その気泡がこわれる時に発生する超音波が骨の芯まで浸透し、腰痛・肩こり・手足の疲れに効果がある。
寝ころび湯ーー文字通り横になって、リラックスして湯に浸かる。
座り湯ーーこれは、背中やふくらはぎにジェット噴流を浴びせ、マッサージしてくれるものだ。
それから、外に通じる扉を開けると、そこは緑に囲まれた露天風呂があった。
あまつさえ、サウナや水風呂まで完備されていた。
それに何よりも、壁画には【富士山】が描かれている。
富士山だぞ?!異世界で富士山!!
ありえないだろ?!
これが日本人が関係してないって言うなら、建設者出てこいや!!
俺は最早、乾いた笑みしか出てこなかった。
俺の前に、十二人のプレイヤーが来てると言ってたし、もしかしたらその中の何処ぞの日本人が銭湯を造ったのかもしれないな。
兎にも角にも、風呂に入れるのは有難い。
ここは、顔も名前も知らない日本人に感謝しつつ、遠慮無く入らせて貰おう。
俺は心の中で、名も知らぬ男(女?)に手を合わせながら、掛け湯で体を流すと、ゆっくりと足から風呂に浸かる。
「ふう~」
俺は自然と息を吐き出した。やはり風呂は最高だ。
この三週間の疲れが、一気に癒されていく感じだ。
早朝と言うこともあってか、この銭湯には今は誰も居ない。
ある意味貸し切り状態だった。
俺は極楽気分を味わっていた。
皆もゆっくり風呂を満喫してればいいんだが……。
そして、風呂の良さを知って欲しい。
俺がそんなことを考えた丁度その時、背後の脱衣所に通じる扉が唐突に開かれた。
ガラリーー。
貸し切り気分もここまでか……。
少し残念ではあったが仕方ないと思い、俺は扉の方を振り向き………………そこで思考がフリーズした。
「わーい!お風呂だー!!」
「いけませんよ?テン。お風呂では走らないのがマナーです」
「最初は掛け湯……だったかしら?それでまずは、体の汚れを流して入るのよね?」
「……ん。正解」
「……………………」
あれ~?どうしてだか、女風呂に入ってる筈の四人の幻覚が見えるんだが……。
早くものぼせてしまったか?
それともこれは夢かな?
焰華とキラリと陸はタオルで体を隠してるが、テンはすっぽんぽんなんですけど?
俺、欲求不満末期かな?
そんな風に俺が現実逃避してると、バチりとテンと目が合ってしまった。
「マスター!!」
両手をぶんぶん振りながら俺の所に駆け寄ろうとしてくるテンを見て、漸く俺の思考が活動を再開する。
「ななななななななななな?!!!」
「何で?!どうして?!」そう疑問を口にしたかったが、かなり動揺してたせいで、『な』以外忘れたかのようにそればかりを連呼する、情けない俺。
けれど、こんな俺の言葉にならない言葉に、焰華がちゃんと答えてくれた。
「ふふ。番頭さんに聞いたら、今はお客さんは居ないとのことでして、貸し切りにさせて頂きました」
「因みに、お金は後払いにして貰ったから宜しくネ!マスター」
続けて、キラリが悪戯を成功させた子供のようにウィンクして、補足した。
「……………………」
そう説明されても、俺は未だに思考がついて行かず、口をパクパク開閉することしか出来なかった。
俺が混乱してるのを余所に、テンがドバンと風呂にダイブする。
「うおっ?!」
その勢いで、風呂のお湯が大きく波打ち、俺の顔面に直撃する。
「あら?テン、ちゃんと掛け湯はしましたか?」
「ちゃんとしたよー!」
「なら、大丈夫ですね」
「大丈夫じゃない!!」
俺はすかさずツッコミを入れた。
「あら、そうでした。テン、お風呂に飛び込むのもマナー違反ですよ?」
「はーい」
「そっちじゃない!!」
焰華が、まるで子供を嗜めるように人差し指を立てて「めっ!」とやると、テンも片手を挙げて、元気良く返事をした。
誰か!!こいつらの暴走を止めてくれ!!
俺は頭を抱える他なかった。
最近、皆の俺への愛情が半端ない。
いや、それ自体は嬉しいのだが、俺も皆のことは大好きだし…………けど、限度と言うものがある。
所構わずスキンシップをはかろうとしてくるので、俺も理性を保つのが一苦労だ。
分かってて俺をからかってるだけなのか、判断に苦しむ。
それとも、本当に意味が分かってないんじゃなかろうか?
一瞬、そう脳裏を過ぎったが…………俺はチラリと陸を見る。
陸は恥ずかしそうにモジモジしていた。
いや!!恥ずかしいなら入ってくるなよ!!
最近、陸のことも良く分からなくなってきた。
積極的なのか消極的なのか……テンと同類のように見えて、案外大胆なこともしたりする。
この様子を見ても、テン以外は絶対分かってて、態とやってるに違いない。
俺があれこれ考えてると、三人も掛け湯を掛け終えてこちらに近付いてくる。
そして、体に巻いてあるタオルに手を掛けて……そこで俺は、はたと気付く。
「ちょ!!まっ!!ストーップ!!タオルは取るな!!」
俺は大慌てで、皆のその行動を止めた。
「え?ですが、銭湯ではタオルを取って入るのがマナーなのでは?」
いや!!正論ですけどもね?!
今タオルを取られたらマズイ!!冗談抜きでマズイ!!
この風呂は濁り湯じゃないし、もしタオルなんか取られた日には…………。
想像しただけで、俺の沸点が限界突破しそうだった。
「マスター?どうかしたの?」
「テンもこっちに来るな!!」
「がーん」
テンがばしゃばしゃ音を立てながら近付いてくるのを、俺はつい怒鳴る形で止めてしまった。
テンは、何処で覚えたのか、自分で擬声語を口にする。
けれど、見る見る内に、テンの目に涙が溜まっていった。
「……マスターは、ボクのこと嫌い?」
「ち、違う!!そうじゃない!!嫌いじゃないけど、マジで今は駄目なんだ!!」
俺は何とか弁解を試みる。
けれど、いくらテンでも、今の俺に近付いて欲しくはない。
何故なら、俺は正座をしていた。
気を抜けば、下半身がまた恥ずかしいことになりそうだったからだ。
テンが悪気があってやってるわけじゃないのは分かってる。
他の三人と違い、テンは間違いなく事の重大性が分かってない。
テンは、天真爛漫で純真無垢なだけだ。
いつもなら、抱きついて頬擦りしたい所だが、今だけは勘弁して欲しい。
俺が必死であれこれと打開策を考えてると、すぐ背後でキラリの声が聞こえて来た。
「あ……」
「…………へ?」
俺はついその声に振り向いてしまい、キラリの『それ』を見てしまったのだ。
キラリのタオルがはだけ、今俺の目の前には、たわわに実った二つの膨らみに、その上にちょこんと乗った小ぶりの突起物。
少し視線を下にずらせば、僅かに開かれた太腿の間には…………。
「がはっ!!!!」
「「「「マスター?!」」」」
俺はそこで意識を手放したのだった。
「……………………」
「ご、ごめんてば!ね?そろそろ機嫌直してよ!」
キラリが必死に謝っていた。
俺は気絶した後、脱衣所で四人に介抱され、今しがた目を覚ましたばかりだ。
例え、誰に情けないと笑われようとも、女との経験が無い俺にとって、あんな不意打ちに耐えられる強靭な精神力は持ち合わせていない。
キラリは手を合わせて、何度も何度も俺に謝る。
「はあ~、もういいよ。けど、次からはあんなことはするなよ?」
「……………………」
申し訳なさそうに誤ってくるキラリを見て、仕方なく俺がそう言うと、何故かキラリが明後日の方向に視線を逸らす。
「おい!!」
反省してるのかしてないのか分からない。
他の三人も、呆れたように苦笑していた。
風呂にはゆっくり浸かることは出来なかったが、また機会があれば、今度こそ一人でのんびり入りたいものだ。
俺は、キラリのことは半ば諦めながら、キム達を探す為に道を歩いていた。
すると、前方の方から、見知った人影が慌てたように走ってくるのが見えた。
「ん?あれは……」
「あ!!」
俺が目を凝らして見ていると、相手も俺に気付き声を上げる。
そして、どう言うわけか、全速力で俺に近付いて来た。
「お願い!!助けて!!」
「は?」
チョウが、開口一番にそんなことを言ってきたのだった。
銭湯…………暫く行ってないや 汗
しかも、態々銭湯の中を観察したりしないし、良く分からなかったので、必死にネットで検索して書いてみました。
けど、上手く説明出来た自信が無い 涙
風呂は、日本人にとって欠かせないイベントの一つだと思ったから書いたけど、やっぱ無理があったかな? 笑
それに、最近従魔達の絡みが減ってたので、従魔を中心に書きたかったのもあります 笑笑
折角の従魔ハーレムなんだから!!




