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王都到着で明かされた真実

「あ、見えてきたよ?」


 キムが幌から顔を出すと、俺を手招きして知らせてくれる。


「あれが、ヴァートス王国……」


 今俺達の目の前には、王都を囲う高く聳え立つ壁が、雄大に広がっていた。

 距離は、まだ一キロメートルくらい離れているだろうが、それでもここからでもその大きさは計り知れない。

 ゲームでも来たことはあるが、やはり現実で目の当たりにしてしまうと圧倒されてしまう。

 流石は王都と言った所か。アージン辺境区とは比べ物にならなかった。

 漸く辿り着けたことに、俺は感慨を覚える。


 俺達は、クイーンビー並びにポイズンビーの襲撃から、拍子抜けする程、すんなりと王都への道のりを進めることが出来た。

 それ事態は喜ばしいことだが、逆に俺は(かえ)って言い知れぬ不安が残った。


 敵の目的は?

 アルさんを葬り去ること?

 それにしては、魔物をけしかけることはしても、姿を見せることはなかった。


 色々疑問は尽きないが、何はともあれ、これで俺達の試験は無事に終了となったわけだ。

 俺の顔に、安堵の笑みが零れる。


「皆も、そろそろ魔獣に戻っといた方がいいんじゃないか?」


 これは、アルさんの提案だった。

 人型で喋る魔獣など、無駄に注目されるだけだ。

 俺としても、あまり目立つことはしたくなかった。


「そうですね。では……」


 俺の言葉を聞いて、焰華とキラリと陸が馬車から飛び降りる。

 そして、それぞれが魔獣の姿へと変容した。

 焰華は、全身を真っ赤な炎が燃え盛り、長い七つの尾が特徴的な火の鳥のフェニックス姿にーー。

 けれど、この炎に触れても、別段熱さも感じないので特に危険ではない。

 キラリは、獅子舞のような格好で、顔には鬼の仮面を着けたバロン姿にーー。

 周囲には、鏡の欠片がキラリを取り囲むように転回していた。

 陸は、体長二メートル程の大きさで硬質な体躯に、カバとサイを足したような姿で青黒く、額と鼻の辺りに大小の角が特徴的なベヒモス姿にーー。

 テンは馬車の中でカーバンクル姿になると、俺の膝の上にちょこんと乗る。


 カ、カワイイ…………。


 王都に入れば、皆を何処かの物陰でまた人型に戻せば良いだろう。


 そうこうしてる内に、俺達の馬車が、王都の正門前で停車する。

 一瞬、門兵らしき人物二人が、こちらを見て驚いたように目を剥いた気がした。

 俺は首を傾げる。

 アルさん達が馬車から降りると、その門兵二人と、何やら話し込んでいた。

 門兵の二人が、何故か恐縮してるように見えるのは気のせいだろうか?

 ここからでは、何を話しているのかまでは分からない。


 そして、少し経ってからアルさん達が、俺達の元に近寄って来た。


「いや、待たせて悪かったの。入市税はこちらが払っておいたから、すぐに入れるぞ?」

「は?いや……それは流石に……」


 俺が申し訳なく思い、断りの言葉を口にしようとすると、アルさんがそれを制した。


「皆、頑張ってくれたからの。これは、ワシのほんの心ばかりの礼じゃと受け取って貰いたい」

「そう…………ですか?なら、有り難く受け取らせて貰います」


 ここまで言われて断るなど、それこそ失礼に値するだろう。

 そう思った俺は、素直にその気持ちを受け取ることにしたのだ。


「うむ!」


 アルさんは、とても満足そうな顔をしてくれた。

 そうして、俺達は王都の門を潜る。

 門の先は、早朝にも関わらず、それなりに人が行き交っていた。

 この人混みを見ていると、日本での東京を思い出す。

 ホームシックとまでは行かずとも、懐かしさに僅かに胸が詰まる。

 俺は十年間引きこもり生活だったが……。


「さて……皆御苦労であった」


 アルさんが俺達に向き直ると、労いの言葉を掛けてくれた。


「試験の結果は、戻ってから知らされることじゃろう。して、帰りの同伴の者じゃが……」

「その必要はありません」


 アルさんが、ヴィンセントさんとヤハムさんを交互に見て言うので、俺はすかさずアルさんの言葉を遮って、口を挟んだ。

 キム以外のメンバーが、俺を信じられないような目で見てきた。


「ほう…………それは何故じゃ?」


 アルさんが目を細めて、面白そうに聞いてくる。


「出発前から、“本物”の試験管が一緒に着いて来てましたよね?帰りも彼が一緒なのでは?」

「「「「え?!」」」」


 俺の意外な言葉に、皆が驚きの声を上げる。


「…………キラリ」


 俺が名前を呼ぶと、キラリが頷き、誰も居ない筈であろう場所に向かって話し掛けた。


「そこにいるのでしょ?出てきたらどうかしら?」


 キラリの呼び掛けに、一瞬の静寂の後、その場所の景色が突然ゆらりと揺れた。


「「「「っ?!」」」」


 リンダ達が息を飲む。

 そこに現れたのは、黒装束に身を包んだ、一人の壮年の男が立っていた。


「は?え?どう言うこと?!」


 リンダが、混乱する頭で必死に状況を理解しようと努力してるが、どうやら無駄に終わってしまったみたいだ。

 頭を抱えて、目を回している。


「ほっほっほ。いつから気付いておった?」

「出発前に…………ウチのキラリには、そう言う小細工は通用しないので。そこでピンと来たんです。貴方は、初めの自己紹介の時に、自分が試験管などとは一回も口にしていなかった、と」

「なるほど…………どうやらワシは、お主をまだ見縊(みくび)っていたようじゃ。想像以上の慧眼を持っておるようじゃな」

「いえ。彼に気付けたのはキラリのお陰ですから。俺一人なら確実に分からなかったことです」


 俺は苦笑して、キラリをチラリと見る。

 キラリは僅かに頬を染めて微笑んだ。


「そうか…………ならば聞くが、何故その場で問わなかったのじゃ?」

「必要で無いと判断したからです」

「必要で無い?」


 俺は頷くと、俺の考えを皆に伝えた。


「アルさんが何者かは、俺には分かりません。正直気にはなりますが、特に興味はありません。アルさんは、初めから嘘は言っていませんでしたから。『自分を王都まで送り届けること』……これが、今回の試験内容でした。どう言う理由でこんな回りくどいことをしたのかは知りませんが、俺達の仕事は、貴方を無事に王都に送ることでしたから」

「ふむ……じゃが、姿を隠してる怪しい者が傍におれば、心も休まぬであろう?もしかしたら、実は暗殺者か何かで、寝首を欠かれる恐れもあったのでは?」


 アルさんが、意地悪くニヤリと笑って聞いてきた。


「その心配は、最初からしていません」

「ほう……何故じゃ?」

「…………俺の直感です」


 俺も、意地悪くニヤリと笑って、そう切り返してやる。

 俺の言葉を聞いて、アルさんもヴィンセントさんもヤハムさんも、それから、黒装束の男も目を丸くする。

 それから、盛大に笑い出した。


「わっはっはっは!そうかそうか、直感か!!」

「くっくっく。これは一本取られましたね」

「ははは!確かにそうっすね!!」

「面白い男だね、君は」


 リンダ達は、ポカンとその様子を見ていた。

 四人が一頻(ひとしき)り笑い終えると、アルさんがまだ笑いを堪えながら口を開く。


「では、改めて……」


 アルさんが黒装束の男に目配せすると、男が一つ頷いて一歩前に出た。


「改めて自己紹介をさせてもらう。アスカくんの言う通り、今回の試験管は俺だ。名はガレスと言う。帰りも、俺が同伴となるから宜しく頼む」

「はい。宜しくお願いします」

「お願いします」


 それに答えたのは俺とキムだけで、他の四人は、未だに呆然と硬直したままだった。


「して、この後は、お前さん達は一週間程王都に滞在するんじゃったか?」

「はい。俺とイーダムは王都は初めてですし、それに皆長旅で疲れてますから、少しくらいはのんびりするのも良いかと」

「そうか。なら、出発時間などはそちらが決めてくれて構わない。決まったら、俺の所に知らせに来てくれ」

「分かりました」


 ガレスさんの言葉に、俺は頷く。


「おお、そうじゃ!この王都には、銭湯なるものがあるぞ?長旅で疲れた身体を癒してくれるじゃろう」

「んな?!それは本当ですか?!」


 そこで話が終わりだと思い、俺達がその場を離れようとすると、アルさんが最後に信じられないことを口にした。

 その情報に俺はすぐ様飛び付き、アルさんに詰め寄ってしまう。


「う、うむ。本当じゃ。なんなら、今から地図も書こう。近くに宿もあるから、丁度良いじゃろうて」


 俺の鬼気迫る迫力に、アルさんが若干顔を引き攣らせて後退る。

 俺の顔がパァと明るくなった。


 この世界の一般階級には、風呂と言う概念があまり無いらしく、普及されていなかった。

 なので、宿でも当然風呂は無く、毎回濡れたタオルで体を拭いていたのだ。

 魔法が使える者なら、〈清潔(クリーン)〉と言う魔法を覚えれば、体を清めることが出来るらしいが、俺にはそれが出来ない。

 旅の間は仕方ないと割り切れるが、やはり日本人としては、風呂に浸かれるものなら浸かりたい。


「あ、有難う御座います!!」


 俺は何度も何度もアルさんに礼を言うと、受け取った地図を片手に、スキップしたい気持ちを抑えながら、足早に銭湯がある方角に向かって行ったのだった。


 ・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「…………どう見ます?」


 ヴィンセントが、アスカ達が歩き去った方角を見詰めながら、アルに聞いた。


「うむ。まだ確証は無いが、ほぼ間違いないじゃろう」

「そうですね。俺もそう感じました。それに銭湯に対するあの食いつきよう…………くく」


 ヤハムが笑いを噛み殺しながら言う。


「ほっほ。そうじゃな、あれは間違いなく【日本人】じゃろうな」


 驚くことに、アルの口から【日本人】と言う言葉が飛び出す。

 けれど、他の面々は特に動揺することもなかった。


「では、この王都に……」

「いや。おそらくは、あの者はそれを良しとしないじゃろう」


 ガレスが言いかけた言葉を遮り、アルは首を横に振った。


「えー?残念っすね!面白い奴なのに」

「そう……だな。少なくとも、“あの連中”よりは見所があると思いますよ?」


 ヤハムの言葉に、ヴィンセントも同意する。


「ほっほっほ。随分アスカくんを気に入ったようじゃな。だが、安心せい。いずれ近い内に、再び相見えようぞ?今はただ…………静かに彼の成長を見届けよう」


 アルは、刻んだ皺を更に刻ませ、そう意味深な言葉を残し、城下町に消えて行くのであった。

主人公よ…………人型よりも、本来の魔獣姿の方が目立つと気付こうか? 笑



頭はそれなりに良いけど、何処か抜けてる我が愛しの主人公でふ 笑笑

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