強さって何だろうな?
「へえー、これが解毒剤の原料になるのか?」
「ああ、後数種類の薬草を混ぜれば完成だが、これだけでも毒をかなり緩和してくれる。応急処置が出来るんだ」
旅の間に、イーダムとも少しずつ距離が縮まっていた。
エルフと言う種族は、〈精霊魔法〉と言われる、エルフ特有の魔法が使えるらしい。
だが、イーダムはその適正が無かった。
エルフで精霊魔法が使えない者は居なくはないが、本当に希らしく、そう言う者はエルフの中であまり良い顔はされない。
だから、国を出て冒険者になることを決めたらしいのだ。
イーダムの父親が【錬金術師】とかで、意外にもイーダムも薬草に詳しかったりする。
錬金術師と言うのは、平たく言えば薬剤師みたいなもので、様々な薬草に精通していた。
それから、イーダムのことで分かったことと言えば、男兄弟で育った為か、女にあまり免疫が無い事と、人見知りが激しいこと。
何か親近感が湧いてしまい、最近では俺からイーダムになるべく話し掛けるようになっていた。
「やっばり凄いな。そう言う知識があるのわ」
「そんなことは……それに、アスカにはエンカさんが居るんだから、こんなのは別に必要ないだろ?」
イーダムは、少し照れた素振りを見せたが、すぐにそう言って切り返してきた。
「ん?確かにそうかもしれないが、一応不測の事態にも備えて、回復薬全般はちゃんと揃えてるぞ?」
「え?そうなのか?」
「当然だろ?旅に出る前に、一通り買い足しておいたし。戦闘中に何があるか分からないんだから、備えは大事だろ?」
「……そっか。そうだよな…………」
俺の言葉を聞いて、イーダムが少し驚いた顔をする。
それから、何かを考えるように遠くを見詰めた。
「?」
俺はどうしたのかと首を傾げるが、その横顔は真剣そのもので、声を掛けるのは躊躇われた。
そして、少し経ってから、イーダムが徐に口を開く。
「……俺な、本当はソロでやってたわけじゃないんだ」
俺はそれを聞いてやっぱりかと思ったが、決して口には出さない。
何か理由があるなら、それをちゃんと聞く必要があると思った。
なので、気付かなかったふりをする。
「そうなのか?」
「ああ。冒険者になりたくて国を出たのはいいけど、中々思うように行かなくて、転々とパーティーを渡り歩いては何とかやってきたんだけど、それも限界があってさ」
イーダムは、ポツポツと自分のことを話し出した。
「エルフのくせに精霊魔法が使えないと知ると、皆勝手に離れて行っちまう。見た目だけでもどうにかしようとこんなナリしてみたけど、性格まではやっぱ変わんねぇーし、んで見掛け倒しだっつって結局皆離れてく……その繰り返しだったんだ」
「………………」
まあ、俺も実際は見掛け倒しだって思ったからな。
「けどさ、アスカとキムは違ったよな?俺がエルフで精霊魔法が使えないって言っても…………リンダ達には笑われたけど……」
「俺の場合は、ただ単に精霊魔法って言われてもピンと来なかっただけなんだが……」
俺は頭を掻きながら正直に言った。
「それに、人間だって魔力使えない奴いるんだろ?それなのに、エルフだからって、必ず精霊魔法を使えないといけないって、何か理屈に合わなくないか?」
「はは。そんなこと初めて言われた。アスカって変わってるよな?」
「そうか?」
俺は自分では分からず首を傾げる。
「ああ。いい意味で変わってるよ。…………正直さ、俺アスカが【召喚士】って聞いて、あまり期待してなかったんだ」
「ま、それはそうだよな。それは一般的な反応だと思うぞ?」
それは、今迄何度も言われてきた言葉だったので、俺は特に気にしなかった。
「けどさ、アスカは他のことでそれを補おうとしてる。この間キムが言ったこと……アスカの助言があったからこそ、俺達はここまで来れたんだと思う」
「そう……かな?」
「そうだよ。その時気付いたんだ、俺も他の奴らと同じようにアスカを勝手に【召喚士】っつー枠に嵌めて、見下してたんだって……」
イーダムはそう言って俺に向き直ると、いきなりガバリと頭を下げて来た。
「……は?」
「悪かった」
「い、いやいや!頭を上げろって!!別にイーダムは間違ってないだろ?!さっきも言ったが、それが普通の反応なんだから!」
俺はめちゃくちゃ焦った。
何とかイーダムの頭を上げさせる。
「俺さ、アスカを見てて思ったんだ。俺は周りばかり気にしてたけど、アスカは自分に出来ないことと出来ることをちゃんと分かってる。分かってて、出来ないことを卑下するんじゃなく、出来ることを一生懸命頑張ってる。すげぇーって」
「俺、そんなに凄くねえーよ?」
「いや、アスカはすげぇーよ。アスカはもっと自信持てばいいと思う」
そう率直に褒められると嬉しいが、やはり照れてしまう。
「だから俺もさ、もっと頑張るわ!今はまだ全然ダメダメだけど、いつか堂々とエルフの地を再び踏めるまで、強い冒険者になってみせるからさ!!」
イーダムが、力拳を握り締めて意気込む。
「……ああ。頑張れ。んで、他のエルフ達を見返してやれよ?」
「おう!!」
イーダムは笑顔で、力強く頷くのだった。
やはり、話してみないと分からないこともある。
俺がさっき言った言葉は、決して謙遜などではなかった。
何故なら、俺は実際一度逃げ出しているのだ。
だから、俺は自分が凄いなんて思わない。
本当に凄い奴は、どんな逆境にも逃げずに立ち向かえるだろうから……。
寧ろ、俺はイーダムの方が強いと思う。
何だかんだ言いながらも、ヤケにならずに冒険者を続けてるイーダムは、俺なんかよりよっぽど前を見据えているように見えた。
イーダムは、己の足でしっかりと歩く決意をしていた。
俺にも出来るだろうか?
この異世界で…………第二の人生を、今度こそ悔いなく生きていくことが…………。
先のことなど分からないが、折角貰ったチャンスだ。
この世界は、俺の世界とは真逆で、常に死が隣り合わせにある。
これからも、きっと危険な日々が続くだろう。
それでも俺は、俺の従魔達と助け合いながら最後まで笑い合って生きたい。
この世界で、これから出会いと別れを繰り返し、俺も強く成長出来たら良いなと、強く思うのだった。
イーダムとの絡みが無かったから書いてみたが…………微妙? 笑笑




