従魔証明の驚きの理由
話が終わると、皆各々準備の為会議室を出ていく。
キムも皆に倣って出ていこうとするのを、俺が呼び止めた。
「キム、悪いんだが一つ頼みがある」
「ん?何?」
「実は……俺、旅に出たことなくてさ。出来れば色々必要な物とかあったら教えて欲しいんだ」
ゲームでは、昼夜は存在したが、当然寝なくても疲れることもなく冒険が出来た。
だが、現実ではそうも行かないだろう。
異世界の旅と言えば、やはり野宿が定番だ。
けれど、俺はキャンプなんかも行ったことは無く、何が色々入り用になってくるのか、さっぱり分からなかったのだ。
初対面の奴にこんなことを頼むのは気が引けるが、冒険者で知り合いはキムしかいない。
リンダ達は論外だった。
それに、何となくだが、キムは信用に足る人物だと俺が勝手に思っていた。
「何だ、そんなこと?別に構わないよ?」
キムは、俺の申し出を快く承諾してくれた。
だが、ただ助けて貰うだけなのは引け目を感じるので、俺もあることを提案する。
「代わり、と言っては何だけど…………これは誰にも言わないで欲しいんだが……」
「?」
俺は声を潜めながら、キムに自分の左薬指に嵌めてる指輪を見せた。
「っ?!それはもしかして、レムルリングかい?!」
キムが驚愕に目を見開く。
何故俺が、態々内緒話のようにしなくてはいけないかと言うと、ゲームの時にも実際にあったことだが、このアイテムボックスを欲しがる奴は五万と居る。
故に、よく狙われたりしていたのだ。
ゲームでは、合法でアイテムをかけた公然試合もあったりしたが、この世界ではきっとそんな試合はないだろう。
最悪、力ずくで手に入れようとしてくる輩もいるかもしれない。
だから、あまり大事にはしたくなかったのだった。
「ああ。もし必要なら、キムの荷物も俺が預かる」
「それは助かるよ!それって、確か無尽蔵に荷物が入るだけじゃなく、時間経過もないんだよね?」
俺は頷いて肯定した。
「それじゃ、お願いしていいかい?」
「ああ。勿論だ」
キムはとても喜んでくれて、そんな顔をされると、やはり俺も嬉しくなると言うものだ。
何となく、キムとは長い付き合いになりそうな予感がした。
そうして俺達も会議室を出ると、そこにはウィストさんが、何故か待ち構えるように立っていた。
「やあ。アスカくん。ちょっと今いいかい?」
「ウィストさん?申し訳ないんですが、あまり時間が無くて……」
「大丈夫。それ程時間は取らせないよ」
ウィストさんがそう言うので、俺はちらりとキムを見る。
キムは、特に気を悪くしたわけでもなく頷く。
「それじゃ、僕は入り口の所で待ってるよ」
「悪いな」
「いいって」
俺が申し訳なく言うと、キムは手を軽く振りながらその場を後にした。
「すまないね」
「いえ。それで要件は?」
俺が聞くと、ウィストさんが手に持っていた細長い木箱を俺の前に出す。
「これを……さっきやっと届いてね。今日に間に合って良かったよ」
「これって、もしかして……?」
ウィストさんが木箱の蓋を開けると、そこには四つの指輪が入っていた。
「そう。彼女達の従魔証明の指輪だよ」
俺は木箱をウィストさんから受け取る。
指輪の半透明の宝石には、何やら刻印が彫られていたが、これが従魔証明になる物かもしれないと思った。
従魔証明はアクセサリータイプで、好きなアクセサリーを選べるのだとか。
それを聞いた焰華とキラリが、すぐ様指輪を選択し、テンと陸もそれに合わせたのだ。
因みに、従魔証明は有料だ。
需要があまり無いせいもあるかもしれないが、一つ作るのに、金貨三枚必要なのだとか。
本来、冒険者になりたての者は、出世払いも可能とのことだったが、俺は当然の如くキャッシュで支払った。
「今更だけど、何で指輪だったんだ?」
俺は一人一人に指輪を渡しながら聞いてみた。
それは素朴な疑問だった。
好きな物は人それぞれなので、別に気にしていなかったが、焰華とキラリがあまりに強く主張していたので、何となく好奇心で聞いてみただけだった。
すると、焰華とキラリがお互い顔を見合わせると、驚きの理由を口にしたのだ。
「ああ、それはね……」
キラリが含みのある笑みを浮かべて、何故か俺の左手をチラリと見遣る。
「ん?」
俺が首を傾げると、焰華がキラリの言葉を引き継ぐように続けた。
「ふふ。マスターはお気付きでないかもしれませんが、左手薬指には深い意味があるのですよ?やはり女性としては、想い人に指輪を贈って貰いたいじゃありませんか?」
「………………へ?あ……」
そこで漸く俺は思い至る。
俺は特に気にせずに左手薬指に指輪を嵌めていたが、左手薬指に指輪を嵌めるのは、本来そう言う特別な意味合いがあったんだった。
それに気付いたら、一気に顔に熱が集まるのを感じた。
「ははは。アスカくんは随分愛されてるんだな」
ウィストさんに冷やかすように言われ、俺は余計に恥ずかしくなって片手で顔を覆う。
「…………もしかして、だからあんなに注文付けてたわけ?」
そう、焰華とキラリは、石の種類やデザインまでもを、事細やかに指示していたのだ。
それこそ鬼気迫る程に……。
あの時に気付くべきだったかもしれない。
俺がそう聞くと、二人は同時に「当然!!」と言うのだった。
「えー?何?どう言う意味?」
テンはまだ意味が分からず小首を傾げてたが、陸はどうやら気付いてたようで、俺と同じくらい顔を真っ赤にして俯いていた。
「後で教えてあげますね!」
焰華が悪戯っ子のように片目を瞑る。
もう俺は、二の句が継げれなかった。
ただ、恥ずかしさのあまりいたたまれなくなり、一刻も早くこの場から立ち去りたい気持ちで一杯だ。
「と、取り敢えず!さっさと行こうか!!キムも待たせてることだしな!!」
だからそう言うが早いか、皆の視線から逃げるように、足早にキムが待つ入り口へと向かったのだった。
最初は、主人公は左手の中指に指輪を嵌めてましたが、薬指に変更しました。
その方が、ネタ的に面白そうだったので 笑笑




