図書館
その一ヶ月の間、決して依頼ばかりしていた訳では無い。
この日、俺はアージン辺境区唯一の図書館に一人で来ていた。
四人には申し訳ないと思いつつも、依頼は皆に任せることにして、俺はもう一つの目的の、この世界のことについて調べることにしたのだった。
四人は最初、俺が一人で行くのを渋っていたが、ランクアップも大事なことなので、こればかりは俺の我侭を通させて貰うことにした。
図書館に入ると、広さは二万㎡くらいあるだろうか?
本もそれなりにありそうで、俺は心が踊る。
俺は本を読むのが好きだ。
時間があれば、一日中本を読んでても飽きないくらいには、本が好きだった。
もし調べ物が終わったら、本屋巡りも良いかもしれないなと思った。
この世界に本屋があればの話だが……。
俺は、そのまま受け付けに足を進める。
受け付けには、二人の男女の司書が座っていた。
「すみません」
「はい?」
俺が声を掛けると、男の方がそれに答える。
黒髪に片眼鏡で、如何にも優等生っぽい男だ。
「えっと……」
「あ、もしかして、図書館は初めてですか?」
俺が頷くと、男が怒涛の如く説明を始めた。
「では、ご説明させて頂きます。当館は、開館が朝の九時から閉館は夜の六時までとなります。こちらをご利用される際は、初めに受け付けに金貨一枚をお預け下さい。その時に、お預かりした証明として、番号が書かれた木札をお渡しするので、帰る際はその木札を返却して下さい。そうすれば、お金も返却致します。このお金は、保険のようなもので、万が一書物を汚されたり破損された場合などは、お預かりしたお金で支払われますのでご了承下さい。それから、書物は基本持ち出し禁止となっております。もし持ち出されようとした場合は、書物一冊一冊に盗難防止用の魔法が組み込まれていますので、いくらアイテムバッグなどに入れられても、持ち出しは不可能となっておりますのでお気を付け下さいね?最後に、一般人立ち入り禁止の書物庫がありまして、そちらは特定の方や、或いは冒険者でしたらSランク以上の方にしか許可しておりませんので悪しからず。以上になります。何かご質問はありますか?」
「いや、大丈夫だ」
そもそも、話を割り込む隙さえ無かったんだが……。
「そうですか。でしたら、早速ですが金貨一枚をお預け下さい」
俺は保管庫から、金貨を取り出して司書に渡した。
「では、確かにお預かりしました。こちらが番号札になります」
「あ、一つ聞きたいんだが、この世界のことがなるべく詳しく書かれた本とかあるか?」
「えーと、それでしたら…………」
「……C-7」
俺の質問に答えたのは男司書ではなく、今の今までずっと下を向いて読書をしていた、女の方だった。
俺と目を合わせるでもなく、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、確かに「C-7」と呟いたのだ。
「C-7、ね。ありがとう」
俺にはそれだけで充分だった。
番号札を受け取った俺は、Cの棚列の7枠を探す。
すぐにその場所を見つけると、幾つか目ぼしい本を選ぶと、適当な席に座って本を読み耽るのだった。
「…………の!あの!」
「……………………え?」
俺は誰かに呼ばれた気がして、顔を上げる。
そこには、水色の髪を後ろで一つに括り、少しタレ目の大人しそうな女が、少し俺から視線を外す感じで立っていた。
見覚えがあるような無いような感じがして、俺はボーッと彼女を見詰める。
すると、女が何故か少し頬を赤らめながら俯くと、ボソボソと話し出す。
「あ、あの…………閉館時間ですから…………」
「…………え?あ!」
そこで漸く俺は我に返る。
今目の前にいる彼女は、最初に受け付けにいた司書じゃないか!
読書に没頭してたあまり、時間の感覚が全く無かった。
俺は、こっそりメニュー画面を開いて時間を確認してみると、確かにもうすぐ十八時になろうとしていた。
俺が普段当たり前のように見ているメニュー画面だが、実は俺のように【アカシックレコードオンライン】のプレイヤーにしか表示出来ない。
つまりは、この世界に来た異世界人の特権と言うやつだった。
本来、他人のステータスも覗き見することは出来ず、この世界の者がそれをするなら、特殊なスキルか、何かしらのアイテムで視る他ない。
そして、この世界には一応時計は存在するが、それは一般に普及されてはいなかった。
主に上流階級や特別な役職に就いている者のみで、一般階級の人達は、皆教会が鳴らす鐘の音で時刻を知るのだ。
教会は、三時間置きに鐘を鳴らす。
俺のメニュー画面に表示されている時刻も、ちゃんとこの世界仕様になっているのだった。
俺は女司書の指摘で、慌てて本を片そうとする。
「ご、ごめん!気付かなくて!すぐに片付けるから!」
「あ……本は、私が……やって、おきます……から」
相変わらず彼女は、俺と目を合わせようとはしなかったが、親切に片付けを申し出てくれた。
「そう?それじゃお言葉に甘えさせて貰うよ。本当にゴメンね?次からはちゃんと気を付けるから」
「あ……いえ」
彼女は、もしかしたら人付き合いが苦手なのかもしれない。
そう思ったら、俺は勝手に彼女に親近感が湧くのだった。
それからは、ギルドで依頼をこなしつつ、二、三日に一回は図書館に通い詰める毎日が続いて、あっと言う間に一ヶ月が過ぎていく。
やっぱり説明文は難しいな~と思う今日この頃 笑
次話は少し長くなるかな?って感じだったので、ここら辺で区切ることにしました。




