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「今帰ったぞ。
おたえ」
ちょうどその時、玄関を潜ったげん爺が土間に入ってきた。
「アンタ今日は遅かったねぇ」
「おお、山へ入ったら、いいあんばいにキノコがたんと採れおったで、古厩さまに半分ばかりもろうていただいたんじゃ」
そう言って、どさりと籠を下ろした。
おばさんは、土間に御座を広げてキノコに付いたゴミを落としながら話続ける。
「そうですかえ。
たった今、俊之介さんが帰って来なさったんですえ」
「おお、知っておるわい。
さっきな、古厩さまの御屋敷で、若さまからうかがったでな。
俊之介よ、よう帰ってくれたな」
ジジイ、珍しく目付きが優しい。
なんか嬉しい。
「おお、そうじゃ。
若さま、さあさあお入り下され」
「うむ、邪魔するぞ」
あれ?小平太じゃん
「お、小平・・・若さま、何かあったん?」
「うむ、ヌシには早く知らせてやった方がよいと思ったんじゃが」
上がり框に腰をかける小平太は、なんかきまりが悪そうだ。
こんな小平太を見るのは珍しい。
そこでおばさんが、慌てて腰を浮かす。
「まあ、若さま。
何も有りませぬが、せめて白湯なりとも」
「ああ、おたえ、構わぬ。
直ぐ帰るゆえそのままでよいぞ」
「は、はあ・・・」
おばさんは動くに動けず、その場でまた腰を下ろした。
俺は、その知らせておきたいって事が気になって仕方がない。
「で、その知らせたい事って?」
「う、うむ」
ためらう様子の小平太は、思い切ったような顔を上げた。
「せっかく帰ったところじゃが、いま一度、ヌシには出張ってもらわねばならぬようじゃ」
ガタッ
振り返ると、ふみちゃんが土間に転がる桶を拾っている。
「すっすみません。
手を滑らせてしまい・・・」
表情は変わらないけれど、指先が白くなるほどぎゅっと桶の端を握りしめている。




