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広がる不安。
深まる疑問。
と、そこでオッサンの向かいに座る目付きが鋭い高齢のサムライが、初めて口を開こうとしていた。
これまで以上に厳しい視線を感じる。
「ところでその方、佐吉が申すには、勘定に長けておるそうじゃがまことか?」
「え?あ!
少しぐらいなら・・・」
「ふん、では試みに此を勘定いたせ」
そう言うと、後ろに控えている付き人さんに目配せした。
ははっ!と畏まって答えた付き人さん、俺の前に1冊の帳面と硯と筆を置く。
くそ~佐吉め~
やっぱり余計な事を
俺はしぶしぶ帳面を開いた。
羅列される漢数字、こりゃ読みづらい。
でも、計算じたいは大したことないな、暗算レベルだ。
「はい、出来ました」
「ほう!
これはまた、随分早いのう」
高齢のサムライが、鋭い目をますます細める。
「勘定方、あらためてみよ」
「は、は!」
勘定方と呼ばれたサムライが、帳面を取り上げて算盤を弾き出した。
しばらくは、算盤を弾く音だけが大広間に響く。
やがて顔をあげた勘定方は、驚いた様子で俺の顔と帳面を見比べている。
居心地わる。
「如何いたした?」
高齢のサムライが、勘定方に催促する。
「早ようせよ」
「は、は。
ひとつの誤りも有りませぬ」
「ほう、まことか?」
表情に乏しい高齢ザムライが僅かに目を見開いた。
それに答える勘定方はなんとなく悔しそうに見える。
「誤りはござらぬ」
「あい分かった、下がれ」
勘定方を下がらせた高齢ザムライが、ステージ上のミスターを見上げる。
「殿、この者、如何いたしますか?」
「さよう、しばし勘定方あずかりとして留め置くがよかろう」
ミスターの目が、じろりと覗き込んでくる。
「ワシもここまで話したのじゃ。
その方、よもや否やは有るまいの?」




