2
もっともこの事は、俺が外へ出歩けるようになって気づいたんだけどね。
それまでずっと監禁状態だったわけだし。
ここの人たちの歩き方には、違和感を感じてたんだ。
それが確信に変わったのは、宿代を踏み倒そうとして逃げた男の走り方を見たとき。
一生懸命に走ってる割りには遅い。
普段から変だけど、焦ると手足の動きが余計バラバラになるんだ。
「俊之介さ。
ひとつ教えてくだされ」
ほっと一息ついていると、イケメンザムライが近づいてきた。
この人は、え~と・・・
うん、そうだ矢口の新三郎って人だ、確か。
「新三郎さ、でしたよね?」
「さよう。
どうしても知りたい事があるのじゃが、良いかの?」
「うん、なに?」
「さっかあの稽古をするのに、まず歩みの修練をいたすのは、なにゆえじゃろうか?」
「う~ん、それは早く走るためってことなんだけど」
「ふむ、あのように歩むは早駆けのためとな?」
「みんなは歩く時も駆ける時も、手を腰に当てて、足を高く上げないでしょ」
「むろんじゃ。
武士は常に隙を見せぬものじゃ」
「それって勿体ないな~って思ってね」
「勿体ないじゃと?」
イケメンの新三郎は露骨に怪訝な顔で見返してくる。
こりゃあ論より証拠ってヤツかな。
「小平太さ!
ちょっといい?」
「おう、なんじゃ?」
小平太が、片手をあげてドカドカ近づいてくる。
「小平太さよか足の早い人っていんの?」
「ぬう、此処では等々力の五郎兵衛殿ぐらいじゃが、それがどうされた?」
「五郎兵衛さ、ちょっと来て!」
「ワシがことか?」
年のわりに野太い声だ。
振り返った男は、身長160センチを越えてるだろう。
この辺りじゃ大男の部類だろうな。
この五郎兵衛ってヤツ、ちょっと気難しそうな顔で、眉をピリピリっとつり上げた。
「小者の分際でワシを呼びつけるとはの。
中々の性根じゃわい」




