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「ぜんぜん桶?」
ふみちゃんがクスクス笑いだした。
「また分からない事を仰いますのね」
「いや~、あ、そだ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「はい?
なんでございましょう」
「うん、火打石と火打金の余分ってある?」
「火打石ならございますけど・・・」
「じゃあ、火打金の代わりになる物って?」
「えっと、そうそう、彼処の鉈なら代わりになりましょう」
「へえ、借りてもいい?」
「ええ、どうぞ」
俺は、土間の壁に引っ掻けてある錆びた鉈を手に取りながら続けた。
「それから塩、少しもらえないかな?」
「塩、でございますか?」
「うん」
「少しなら。
ちょっと待っててくださいね」
ふみちゃんは、カマドから離れて土間の隅に行き、壺の中から小さな塩の塊を取り出した。
そしてそれを布切れに包むと、俺の方へ差し出した。
「はい、どうぞお持ちになってください」
「さんきゅ」
玄関に向かいかけた俺は、あっと足を止めた。
そう言えば、いい忘れてたことがあるんだ。
「その、足袋ありがとう。
お陰で歩いても痛くないよ」
「お役に立てたのですね」
ふみちゃんは上気した顔で、嬉しそうにつぶやいた。
「俊之介さんが帰ってきてくださって、ふみはうれしゅうございます」
「え?」
「俊之介さんが、和尚さまとご一緒に古厩さまのお屋敷に行かれた後、父からは、もう戻って来ないと聞かされましたから」




