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他の2人が、それじゃお願いしようかって雰囲気になって、言い出しっぺの若い商人が、懐から出した銭をバラバラと板の間に置いた。
「親父さん、此処に置いとくよ」
「ああ、はいはい。
有り難うござい」
げん爺がお金に手を伸ばす。
俺は玄関を出掛けに、何となく銭の数を目で数えてみた。
七つ、八つ、九つ・・・
あれ?
3文足んないじゃん
宿代は、1人1泊2食付きで4文のはず、これは全国どこでも同じらしい(げん爺調べ)。
俺は、若い商人に声をかけた。
「あの・・・
3文足りませんけど」
「あ?」
若い商人が、ジロッとこちらを睨んだ。
「この宿はなにかい?
客にいちゃもんを付けるんですかい!」
「いえ、そんなつもりは」
「ほほう、つもりがなくて客に絡むたぁ、いい度胸じゃあねぇかい、若造め」
めちゃめちゃケンカ腰。
ツレの二人は、どうしたもんかって顔で困り切っている。
「まあまあ、お客さんを疑っちゃあいけねぇ。
おい、俊之介、謝んな!」
「まあ、謝るってんなら、俺も腹に納めてやってもいいんだぜ」
げん爺の言葉に勢いづいたのか、若いお客さんは、カサにかかって薄笑いを浮かべる。
げん爺もげん爺で、その場しのぎに取りなすつもりみたいだ。
謝るとかヤだよ。
だって俺、悪くねーじゃん。
ちょうどそこへ顔を出した新しいお客さんが、どれどれって玄関口から入ってきた。
板の間に置かれた銭をチラ見して、若いお客さんに向かって口を開く。
「確かに3文足りませんな、あんた、この宿の主人が勘定に得手でないのをいいことに、付け入るようなマネはお止しなせぇ」
「なんでえ手前ぇは!
後からきた分際で、口を挟むんじゃねえや!」
「困ったお人だな」
若いお客さんは、新しいお客さんに絡みだすけど、この人は動じる様子がない。
度胸が良いのか何なのか。




