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そのとたんに、げん爺が満面の愛想笑いを顔に貼り付けた。
「これはこれは、お疲れ様でございます。
さあさあ、お入りくだされ」
「おお、では早速、草鞋を脱がせてもらうよ」
「やれやれ疲れたのう」
口々に陽気な声をあげながら、3人はドヤドヤと玄関口に入ってくる。
げん爺の顔がぐるりとこちらを向いた。
「これ、俊之介。
かようにぐずぐずしておるでない。
直ぐに水を張った桶をお持ちせよ!」
「ラジャー!」
「おや新顔かい?
ずいぶん威勢が良いねえ」
客の1人が、げん爺と俺の顔を代わる代わる見比べた。
40がらみの恰幅のいい男だ。
馴染みの客なんだろう。
「へえ、近ごろ雇ったばかりで、まだまだ物の用にはたちませんが」
「まあ何にしたって、元気があるに越したこたぁあるまいよ。
よろしくな、あんちゃん」
「ラジャー!」
馴染みの商人は、今度は懐をゴソゴソしながら残りの2人に声をかける。
「ここの宿は先払いだ。
さあさあ払った払った」
「まあまあみなさん、此処で知り合ったのも何かのご縁でございましょう。
ここはあっしが払いやしょう」
「いや、しかしそれじゃあ申し訳が」
「何の何の、ほんのお近づきのしるしでございます。
その代わり、これからもよろしゅうにお頼もうします」
3人の中で1番年若い男が、今日の宿代をもつと申し出たようだ。
話の向きでは、3人は旅先で出会ったもののようだけど。
商売は人との繋がりが大事なんだろうな、と俺は何となく3人のやり取りを眺めていた。




