5
「だってここ、お前んちの宿じゃん」
俺は後ろの小屋を指差して見せた。
そのとたんに小平太は、あっヤバッて顔をして慌てだす。
「そっそれはそうじゃ。
だいたいお前からして当家の小者じゃからな。
務めに励んでもらわねば困るが・・・
う~む」
「コモノ?」
「そうじゃ、それがどうした?」
コモノってナニ?俺の役職?
なにその小者感
「げん爺は?」
「中間じゃ」
「チュウゲン?
どっちが偉いの?」
「中間に決まっておろう」
なに言ってんだコイツッて顔だ。
ちょっと落ち込むわ。
何がって、俺、底辺じゃん。
小平太の顔は、なおも不思議そうだ。
「そもそもお前は、此処へ来るまで何処で何をしておったんじゃ?」
「あー・・・」
その質問は、ここへ来てからしつこいくらい聞かれてる。
そして飽きもせずに同じ答えを返してるんだ。
「倒れた時に頭を打ったらしいんだ。
覚えて無いんだよ」
「さもあろう・・・
言葉すら忘るるくらいじゃ、よほど打ち所が悪かったのじゃろうな」
毎回のことで見飽きてるけども、小平太も気の毒そうな顔をした。
くっそ~憐れみを受けてるみたいで、やっぱいい気はしないな。
でもホンとの事を言ったって理解できないだろうし、俺だって何でこうなったのか説明できないし。
「まっまあ、そういう事だからっ」
「分かった。
残念じゃが出直すとしよう」
「あ、ちょっと待った!」
立ち去ろうとする小平太の後ろ姿を声で引き留めた。
「それから、その着物は何とかして」
「これではいかんのか?」
「袴がね、裾をまとめないとサッカーには向かないかな」
「お、おお、さようか。
では、そう致そう」
「それから」
「まだ何かあるのか?」
小平太は片方の眉毛をつり上げた。
注文が多いヤツだって思ってんだろうな。
分かりやすい男だ。




