39/848
3
「なんだ、こっからも見えるんじゃん・・・」
「おお、有明のお山か」
俺の横で、小平太も有明山を振り仰いだ。
そして、ほうっとため息をもらした。
「美しいのう」
「うん」
「ワシは富士のお山を見たことはないが、有明のお山は、富士山によく似ているのだそうじゃ」
「だね」
「この景色は、まっこと郷の宝じゃわい」
「うん」
独特な形をした山だ。
そういや富士山に似てるからって有明富士って呼ばれてたよな
俺ってガキのころ、有明富士が日本で1番高い山だって信じてたんだ
父さんに笑われたっけ
バカだよな、俺
それは子供のころの遠く懐かしい記憶だった。
小平太だけじゃ無かったんだ
生まれた時代は違うけど、此処は俺の故郷なんだ
「分かった、教えてもいいよ」
「まっまことか!」
小平太が躍り上がって声を張り上げた。
その様子には水を差すようだけど、俺には言っておかなきゃならない事がある。
「その代わり条件がある」
「条件とはなんじゃ?」
「決め事というか約定というか」
「おお、申せ」
「じゃ言うよ。
気に入らないことがあっても、やたらに暴力を振るわないこと」
「暴力とはなんじゃ?」
「う~ん、つまり、やたらに蹴ったり殴ったり物を投げたりしないこと」
物を投げたり、という部分で小平太は、少しバツの悪そうな表情を浮かべた。
「う、うむ。
承知した」




