2
そして素早く辺りを見回した。
俺もつられて辺りを見回す。
うん、誰も見てないね、で?
するとやにわに、ガバッと地面に手をついた小平太。
「このとおりじゃ、頼む!」
「ええ!」
「ワシにさっかあを教えてくだされ」
「何でそんなにサッカーしたいの?」
「ワシはのう・・・
ワシは強くなりたいんじゃ!」
「ええ?
サッカーで強くなるって・・・」
おまい・・・
Jリーグでも目指すんか・・・?
小平太の言葉が続く。
「この郷はのう・・・
この郷は豊かな良い郷じゃ。
じゃが近年、北の長尾平三や南の武田甲斐守から目を付けられておるのじゃ!」
「・・・ん?」
北の長尾平三ってのは知らないけど、南の武田っつーのは、ひょっとして武田信玄?
あー・・・
戦国ですね、分かります
もしかして俺、戦国時代に来ちゃったんか、ショック!!
「佐久の衆も諏訪の衆も、みな甲斐守に降ったそうじゃ。
父上が、そう仰せじゃ。
殊に志賀城の笠原殿は、降るも赦されず一族根切りのうえ、山下町の百姓達もむごい目に遭うたと聞く。」
小平太の目から、涙がぶわっと溢れだす。
思い詰めた表情だ。
「此処をかような目に遭わせるわけにはゆかぬ!
頼む・・・
このとおりじゃ。
ここはワシの生まれ育った郷じゃ。
ワシはこの郷が好きなんじゃ」
小平太の気持ちは分からなくもない。
そりゃあ誰だって郷里は大切だしさ。
でも、なんか方向性が色々ズレてるような
そもそもサッカーは格闘技じゃないわけで・・・
ふと遠くに目を遣れば、林の向こうに青く霞んだ山が見えた。




