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「このところ、ここも物騒だでな。
よそ者は見付けしだい引っ立てよ、との御触れが出ておるのじゃ」
「誰だよ、そんな物騒な回覧板回したの。
ひょっとして区長さん?」
「お前の話も大概わからんが、触れを下されたのは地主さまじゃよ」
「痔ヌシとか痛そう」
「こりゃ話にならんな」
ジジイのヤツ、大袈裟なため息を吐いて首をふるふるさせやがんの。
「なんにせよ、明日あらためてお前とお会いになるそうじゃ。
粗相の無いようにな」
「へー、で、どんな痔なん?
つか痔ヌシって誰?」
「お前も1度顔を合わせておろうが」
ん?
「覚えがねっすけど」
「お前が暴れた時、玄関先で鉢合わせしたお方じゃ」
あ~アイツか
「これ、そのように嫌そうな顔をするでないぞ!」
「だって、いきなり殴られたし」
「あれはお前が暴れたからじゃろ!
命があるだけマシと思え」
「そりゃそーだけどさ。
アイツいきなりキレやがって」
キレ痔か
キレ痔ヌシか
ジジイはやれやれと顔をしかめた。
「まったく無礼なヤツじゃ。
よいか、これからは地主の古厩兵衛さまこそお前の主じゃ。
そんなことじゃあ、口を開くたび首が跳ぶわ。
明日は大人しゅうしとれよ、悪いようにはせぬから」
「へーへー」
キレ痔ヌシんとこが俺の就職先だってか!
どうすりゃこれ以上悪い事なんか起こるのよ




