Scene3 悠の変化
悠は、村の明かりを眺めていた。
遠くに見える、いくつもの小さな灯り。
そこには、自分を知っている人たちがいる。
名前を呼んでくれる人がいる。
困ったときに助けてくれる人がいる。
自分も、困っている人がいれば助ける。
ただ、それだけ。
けれど。
それだけのことが。
今の悠には、少しだけ大切なものになっていた。
「……」
悠は、これまでのことを思い返す。
この世界に来たばかりの頃。
人の気配すらない森の中で、家を作った。
あのときは。
ただ静かに暮らせれば、それでよかった。
――ここなら静かに暮らせそうだ。
それだけで十分だった。
第二章では。
リアが家に来るようになった。
ノアが増えた。
村へ行くようになった。
村人たちと話すようになった。
人が増えていくたびに、最初は戸惑った。
それでも。
――まあ、これくらいなら。
そう思えるようになった。
そして今。
悠は、遠くの村を見ている。
以前なら、あそこへ行く理由を探していた。
今は違う。
理由がなくても。
明日、行ってもいいと思える。
「……ここにいてもいいのかもしれない」
悠は小さく呟いた。
村に住むわけではない。
毎日みんなと話すわけでもない。
人が多い場所が好きになったわけでもない。
それでも。
ここにいてもいい。
そんな気がした。
しばらく村の明かりを眺めて。
悠は、ふっと息を吐く。
「……まあ」
少し考えてから。
「……森のほうが静かだけど」
それが、今の悠にとっての精一杯だった。
村が嫌なわけじゃない。
人が嫌いなわけでもない。
ただ。
静かなほうが落ち着く。
それだけだ。
悠は小さく頷くと、村に背を向けた。
「……帰ろ」
森の中にある、小さな家へ。
窓から漏れる灯りが、もう近くに見えている。
きっとノアが待っている。
いつもの家。
いつもの静かな暮らし。
そこへ帰る。
けれど。
明日になれば、また村へ行くかもしれない。
そんなことを考えながら。
悠は、自分の家の扉を開けた。




