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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第36話 ここにいてもいい Scene1 帰り道


夕方。


空が少しずつ赤く染まり始めていた。


悠は村を出て、一人で森へ向かって歩いていた。


背後から、村の声が聞こえる。


誰かが家へ帰る音。


店を片付ける音。


遠くから聞こえる笑い声。


悠は振り返らなかった。


いつもの帰り道だった。


森へ続く道を、ゆっくり歩いていく。


「……疲れた」


今日も色々あった。


ハンスと畑の話をした。


リリにノアを貸してほしいと言われた。


村の人からパンをもらった。


エドガーとも話した。


思い返してみれば。


一日中、人と関わっていた気がする。


以前の自分なら。


たぶん、途中で逃げ出していた。


人の声を聞くだけで疲れて。


何を話せばいいのか分からなくなって。


早く一人になりたいと思っていた。


今だって、人が多いのは苦手だ。


話すのも得意じゃない。


できるなら、静かな場所で一人で過ごしたい。


それは変わっていない。


「……でも」


悠は足を止める。


森の木々の向こうに、自分の家が見えていた。


静かな場所。


誰にも邪魔されない場所。


最初は、それだけで十分だった。


それなのに。


今日は。


村へ戻る場所があるような気がした。


もちろん、自分の家は森にある。


村に住んでいるわけでもない。


明日になれば、また森で一人で過ごす。


それでも。


村へ行けば、自分の名前を呼ぶ人がいる。


困れば助けてくれる人がいる。


自分も、困っている人がいれば助けられる。


「……変なの」


悠は小さく呟いた。


村に行けば疲れる。


でも、嫌ではない。


一人でいるのは楽だ。


でも、誰かと過ごす時間も悪くない。


そのどちらも、自分にはあっていい。


悠は再び歩き始めた。


森の中に入ると、村の声が少しずつ遠ざかっていく。


代わりに、鳥の鳴き声や木々のざわめきが聞こえてくる。


「……やっぱり、こっちは落ち着く」


そう呟いて。


悠は自分の家へ向かう。


帰る場所は、ここだ。


けれど。


もう一つくらい。


自分を待っている場所があってもいいのかもしれない。


そんなことを。


悠はまだ、うまく言葉にはできなかった。


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