Scene2 村長の言葉
エドガーは、しばらく黙って村の様子を眺めていた。
悠も何も言わない。
広場を行き交う人。
店先で話す人。
遠くの畑で作業する人。
それぞれが、それぞれの場所で過ごしている。
やがてエドガーが口を開いた。
「悠」
「……うん」
「人との付き合い方に、正解なんてない」
悠はエドガーを見る。
「自分に合った距離で、人と付き合えばいい」
「……距離」
「ああ」
エドガーは頷いた。
「毎日顔を合わせてもいい」
「たまに会うくらいでもいい」
「一人で過ごす時間が長くても構わん」
悠は黙って聞いていた。
「森で暮らすのもいい」
「……」
「村に来るのもいい」
エドガーは、悠が暮らしている森の方へ視線を向けた。
「どこで暮らすかなんて、本人が決めればいい」
そして、少しだけ笑う。
「困った時に助け合えれば、それで村の人間だ」
「……」
悠は何も言わなかった。
ただ、その言葉を頭の中で繰り返していた。
困った時に助け合う。
それなら。
自分にもできることがある。
水路を直した。
畑を手伝った。
怪我をしたリアを助けた。
逆に、自分もパンをもらった。
村の人たちに声をかけてもらった。
それは全部。
特別なことではなかった。
誰かが困れば助ける。
何かをもらえば、ありがとうと言う。
一緒に作業をする。
それだけ。
けれど。
エドガーの言葉を聞いた今は。
それだけで十分なのだと、少しだけ思えた。
「……村の人」
悠が小さく呟く。
「ん?」
「……僕も、そうなのかな」
エドガーはすぐには答えなかった。
ただ、悠の頭を軽く撫でるように笑った。
「もう、そうだろう」
悠は少しだけ目を伏せた。
嬉しいのか。
恥ずかしいのか。
自分でもよく分からない。
だから、いつものように。
「……そっか」
それだけ答えた。
けれど。
その言葉は、いつもより少しだけ柔らかかった。




