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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene3 ハンスの言葉


「……これで、終わりだな」


ハンスが水路の先を眺める。


さっきまで土で塞がっていた場所には、もう水が流れている。


細い水の流れが、畑の方へ向かっていく。


村人たちも、それぞれ作業道具を片付け始めていた。


悠は、少し離れたところから水路を見ていた。


自分がやったことを考える。


土を掘った。


運んだ。


水の流れを確認した。


それだけだ。


もっと簡単にできる方法なら、いくらでもあった。


魔法を使えば、一瞬で直せたはずだ。


けれど今日は、そうしなかった。


ハンスが悠のところへ歩いてくる。


「悠」


「……ん?」


「ありがとな」


悠は少しだけ首を傾げた。


「……僕、あんまり役に立ってないけど」


その言葉に、ハンスが目を丸くする。


そして、呆れたように笑った。


「何言ってんだ」


「……?」


「一緒にやっただろ」


「……一緒に?」


「そうだ」


ハンスは直った水路を指差した。


「俺一人じゃ、もっと時間がかかってた」


「……でも」


悠は言葉を探す。


「僕がいなくても、直せた」


「そりゃそうかもしれん」


ハンスはあっさり認めた。


「でもな」


少しだけ間を置いて、悠を見る。


「一緒にやった」


「……」


「それで十分だ」


悠は何も言えなかった。


十分。


その言葉が、妙に引っかかった。


役に立つというのは。


何かを一瞬で解決することだと思っていた。


自分なら、できる。


魔法なら、できる。


だからこそ。


自分がすることに意味があるのか、よく分からなかった。


けれど。


今日のことは違った。


土を運んでいる間、ハンスが隣にいた。


リアもいた。


村の人たちもいた。


誰かが土を掘って。


誰かが運んで。


誰かが水の流れを確認して。


少しずつ、水路が直っていった。


悠はもう一度、水の流れを見る。


「……一緒に」


小さく呟く。


ハンスが笑った。


「そういうことだ」


悠は返事をしなかった。


ただ。


胸の中に、今までとは少し違う感覚が残っていた。


自分が何かをしたから、役に立った。


それだけじゃない。


誰かと一緒にやったこと。


その時間そのものにも、意味がある。


そんな考えが、初めて少しだけ理解できた気がした。


「……そっか」


悠は小さく呟く。


「……うん」


ハンスはそれ以上何も言わなかった。


ただ、並んで水路を眺めていた。


流れる水の音が、静かに二人の間を通り過ぎていった。


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