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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene2 作業開始

#### Scene2 作業開始


悠は土の山の前に立った。


少し考えてから、手で土をすくう。


「……重い」


魔法なら、もっと簡単に運べる。


けれど今日は、そういう日ではないらしい。


悠は土を入れた籠を持ち、水路のほうへ運んでいった。


その隣では、リアが石を集めている。


「このくらいでいいかな」


「……うん」


リアが拾った石を運ぶ。


その先では、ハンスが崩れた水路の形を整えていた。


「そこに土を入れてくれ」


「……ここ?」


「そうそう。もう少し右だ」


悠が土を入れる。


ハンスが手でならす。


少しずつ、水路の形が戻っていく。


しばらくすると、聞き慣れた声がした。


「おーい」


悠が顔を上げる。


ドルフが歩いてきた。


「……ドルフ」


「手が足りねえって聞いた」


そう言いながら、ドルフも水路のそばにしゃがみ込む。


大きな石を持ち上げ、崩れた場所へ運んでいく。


「……重くないの?」


「これくらいならな」


悠は少しだけドルフの腕を見る。


自分なら魔法で持ち上げる。


でも、ドルフは普通に運んでいた。


さらに。


「みんなー。休憩にしなよ!」


ミーナが籠を抱えてやってきた。


中にはパンや焼き菓子が入っている。


「差し入れだよ」


「ありがとう!」


リアが嬉しそうに答える。


「……ありがとう」


悠も小さく頭を下げた。


「いいのいいの。水路が直ったら、みんなで食べようね」


少し離れたところでは、リリが立っていた。


「がんばれー!」


邪魔にならない場所から、元気に声をかけている。


「悠、がんばってー!」


「……うん」


悠が土を運ぶ。


その横では、ノアが何かを見つけたらしい。


「きゅー!」


前足で土を掘り始めた。


ざくざく。


土が飛ぶ。


「……ノア」


「きゅ?」


ノアが顔を上げる。


「……そこじゃない」


「きゅ?」


ノアは首を傾げる。


そして。


また掘り始めた。


「……」


悠はしばらく見つめる。


「……ノア」


「きゅー」


「……そっちでもない」


リアが小さく笑った。


「ノアも手伝ってるんだよ」


「……遊んでるだけだと思う」


「それもそうかも」


水路の周りには、いつの間にかたくさんの人がいた。


土を運ぶ人。


石を運ぶ人。


水路を直す人。


応援する人。


そして、遊んでいる小さなドラゴン。


悠はそんな光景を、少し不思議な気持ちで眺めた。


一人なら、すぐに終わる。


けれど今は。


みんなで、少しずつ直している。


「……」


悠はまた土を持ち上げた。


今度は、何も言わずに水路へ運んでいった。


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