Scene3 村の子供たち
村の広場では、リリとノアが走り回っていた。
「待って、ノア!」
「きゅー!」
ノアは楽しそうに地面を駆ける。
リリが追いかけ、ノアが逃げる。
時々振り返っては、
「きゅ!」
と鳴いて、また走っていく。
悠は少し離れたところに座って、その様子を眺めていた。
「……元気だな」
別に、自分が遊ばなくてもいい。
リリが楽しそうなら、それでいい。
そんなふうに思っていた。
すると、近くで遊んでいた子供の一人が悠に気づいた。
「あ、悠!」
「……?」
「悠もやろう!」
突然の誘いだった。
悠は自分を指差す。
「……僕?」
「うん!」
子供は当然のように頷く。
悠はリリを見る。
リリもこちらを見ていた。
「悠も一緒にやろう!」
「……」
どうするか。
少し考える。
走り回るのは疲れる。
子供たちの勢いについていくのも大変そうだ。
けれど。
断る理由も、特になかった。
「……分かった」
「やった!」
子供たちが嬉しそうに声を上げる。
悠は立ち上がった。
「でも……」
「なに?」
「……少しだけ」
「うん!」
悠は子供たちの輪の中へ入っていく。
ノアがこちらに気づいた。
「きゅ?」
「……おいで」
「きゅー!」
ノアが走ってくる。
リリも笑いながら追いかけてくる。
悠もゆっくり走る。
もちろん、全力ではない。
本気を出せば、子供たちどころかノアだって追いつけない。
だから、少しだけ。
子供たちに合わせて。
「悠、こっち!」
「……うん」
「ノア捕まえて!」
「……それは難しい」
「なんで?」
「……速いから」
ノアが楽しそうに鳴く。
「きゅー!」
悠は小さく息を吐いた。
そして、また子供たちと一緒に走る。
森で一人で過ごしていた頃には、想像もしなかった時間だった。
騒がしい。
少し疲れる。
でも――。
「……」
悠は、ほんの少しだけ口元を緩めた。
こういうのも。
たまになら、悪くない。




