Scene3 畑を作る
家へ戻った悠は、収納の中を確認した。
そこには、さっき森で採ってきた果物がいくつも入っている。
これで、しばらくは食べ物に困らない。
……たぶん。
「……でも」
悠は考える。
毎日、森へ食べ物を探しに行く。
それを何日も続ける。
「……面倒だな」
森の中には食べられるものがある。
果物もある。
魚もいる。
探せば、きっと他にもいろいろ見つかるだろう。
けれど。
「毎日探しに行くのは……」
面倒だった。
できれば家の近くで食料を確保したい。
悠は家の外へ出る。
そして、周囲の土地を眺めた。
木々に囲まれた小さな空き地。
ここなら、少しくらい土地を使っても問題なさそうだ。
「……畑、作るか」
思いついたのは、それだった。
幸い、悠には土魔法がある。
「……使ってみよう」
地面に手を向ける。
「土魔法」
その瞬間。
地面がゆっくりと動き始めた。
土が盛り上がり、木の根や小石が地面から押し出されていく。
硬かった土は柔らかくなり、きれいに耕されていった。
「……すごいな」
あっという間だった。
鍬を使う必要もない。
汗をかく必要もない。
ただ魔法を使っただけで、畑らしい土地が出来上がっていく。
「……便利」
次は水だ。
畑に水をやるための水路を作る。
悠が地面に手をかざす。
土が動く。
畑の端から水場まで、細い溝が伸びていく。
水が流れる道だ。
「……これでいいか」
試しに水を流してみる。
さらさらと水が水路を進み、畑の近くまで流れてくる。
問題ない。
あとは――。
「種……」
収納の中を確認する。
いつの間にか能力で作った種がいくつか入っていた。
何を植えるか考える。
野菜。
豆。
小麦。
果物の苗。
とりあえず、食べられそうなものをいくつか選んだ。
「……これでいいか」
畑に小さな穴を作る。
そこへ一つずつ種を植えていく。
土をかぶせる。
そして水をやる。
「……完成」
まだ何も生えていない。
ただの土の畑だ。
けれど。
ここから食べ物が育つ。
毎日森へ探しに行かなくてもいい。
自分で作った畑から、食料が手に入る。
悠は完成した畑を眺めた。
「……これで食べ物には困らない」
満足したように頷く。
家がある。
ベッドもある。
食べ物も確保できる。
そして、その食べ物を作る畑までできた。
「……悪くない」
静かな森。
小さな家。
その隣にある、小さな畑。
悠はその景色を眺めながら、ゆっくり息を吐いた。
誰かに命令されることもない。
誰かに合わせる必要もない。
好きな場所で暮らして。
必要なものを、自分で作る。
それだけでいい。
悠は畑をもう一度眺める。
「……さて」
今日の仕事は終わりだ。
悠は家へ戻っていく。
異世界の森の中。
小さな家と、小さな畑。
そこから――。
悠のスローライフが始まった。




