Scene2 食料問題
朝の森を眺めていた悠は、しばらくしてから腹を押さえた。
ぐぅ……。
静かな森に、妙に大きな音が響く。
「……腹減った」
そういえば。
昨日は何も食べていない。
異世界に来てから、水は魔法で出せた。
家も作った。
ベッドも作った。
けれど――。
「……食料がない」
当然だった。
収納を開いてみる。
中を確認する。
何もない。
「……空っぽ」
昨日の能力確認のときに、収納が便利だということは分かっていた。
けれど、入れる物がなければ意味がない。
「……コンビニもないし」
そもそも、この世界にコンビニがあるわけがない。
カップ麺もない。
パンもない。
おにぎりもない。
冷蔵庫を開ければ何か入っている、なんてこともない。
「……どうしよう」
悠は少し考える。
そして、窓の外を見る。
目の前には――森。
「……探すしかないか」
悠は家を出た。
朝の森を歩いていく。
昨日とは違って、今日は目的がある。
食べられるものを探す。
「……食べ物、どこだ」
木々の間を進む。
足元には草。
その先には大きな木。
さらに進むと、小さな川が見えてきた。
水は透明で、底の石まで見える。
魚もいる。
「魚……」
一瞬、捕まえようかと思った。
しかし。
「……まだいいか」
朝から魚を捕まえて料理するのは、少し面倒だった。
もっと簡単なものが欲しい。
何かないかと周囲を見回す。
すると――。
「あれ……?」
少し先の木に、見慣れない果実がなっていた。
赤と黄色が混ざったような色。
丸くて、手のひらに収まりそうな大きさだ。
「……果物?」
悠は近づいていく。
鑑定を使う。
【名称:ルナの実】
【食用:可】
【特徴:甘味が強い】
「……食べられる」
しかも、甘いらしい。
悠は一つ手に取った。
念のため、もう一度確認する。
毒はない。
食用可能。
問題なし。
「……いただきます」
一口かじる。
しゃくっ。
果肉が柔らかく、みずみずしい。
そして――。
「……甘い」
思わず、目を少し見開いた。
甘い。
想像していたより、ずっと甘かった。
果汁が口の中に広がる。
ほんのり酸味もある。
「……うまい」
もう一口。
しゃくっ。
さらに一口。
気づけば、あっという間に食べ終わっていた。
「……」
手元を見る。
何もない。
「……もう一個」
木からもう一つ取る。
今度はゆっくり味わいながら食べる。
朝の森。
鳥の声。
木々の間から差し込む sunlight。
そして、初めて食べる異世界の果物。
悠は果物を食べながら、ふと思った。
「……異世界の食べ物って、普通に美味しいんだな」
少なくとも。
最初の食事は、悪くなかった。
悠は木を見上げる。
まだ、たくさんの実がなっている。
「……これ、持って帰ろう」
収納に手を伸ばす。
次々と果実を収納していく。
これで、とりあえず今日の食料は確保できた。
悠は満足そうに頷いた。
「……よし」
異世界での最初の食事。
それは、森で見つけた一つの果物だった。




