Scene3 完成
翌日。
悠は再び、ドルフの鍛冶場を訪れた。
入口から中を覗くと、ドルフが作業台の前に立っている。
「……ドルフ」
「来たか」
ドルフが作業台の上に置いていたものを手に取る。
昨日、悠が渡した鍬だった。
「これ」
悠に差し出す。
悠は受け取った。
見た目は、昨日のものとほとんど変わらない。
けれど、握ってみると違いが分かった。
柄が手に馴染む。
長さもちょうどいい。
重さも以前より扱いやすい。
悠は軽く振ってみる。
「……使いやすい」
「そうか」
ドルフはそれだけ言った。
悠は鍬を眺める。
自分で作ったものとは、明らかに違う。
ちゃんと使う人のことを考えて作られている。
「……ありがとう」
ドルフは少しだけ悠を見る。
「礼はいらん」
「……」
「仕事だからな」
そう言って、ドルフはまた作業に戻る。
悠も鍬を持ったまま、その場に立っていた。
少しして、ドルフが顔を上げる。
「壊したら持ってこい」
「……うん」
それだけだった。
悠は鍬を抱えて、鍛冶場を出る。
村に来る前なら。
道具が壊れたら、自分で作ればいいと思っていた。
実際、それでも困らなかった。
けれど今は。
壊れたら、ドルフに持っていけばいい。
そう思える。
自分で全部やらなくてもいい。
そんなことを考えながら、悠は新しい鍬を手に、森へ向かって歩き出した。
「……」
少しだけ。
村の人に頼ることが、自然になっていた。




