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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene2 教えてもらう

ハンスの畑を一通り見たあと、悠は畑の端に立っていた。


ハンスは作物の様子を見ながら、ゆっくりと歩いている。


「作物ってのは、水をやりゃいいってもんじゃねえ」


「……」


悠は黙って聞いていた。


ハンスはしゃがみ込み、土を手に取る。


「土を見て、水を見る」


指の間から土を落とす。


「葉っぱを見て、今日はどうするか決める」


悠は畑を見る。


確かに、同じように植えられている作物でも、葉の色や大きさが少しずつ違っていた。


「……」


悠には魔法がある。


土を耕すこともできる。


水を出すこともできる。


作物に必要な環境だって、ある程度なら調整できる。


だから、今まで深く考えたことはなかった。


必要なだけ水をやればいい。


土が悪ければ、魔法で直せばいい。


作物が育てば、それでいい。


悠にとって農業は、そういうものだった。


「……魔法でやったほうが早いけど」


悠がぽつりと言う。


ハンスは少しも嫌な顔をしなかった。


「ああ」


「そりゃそうだろうな」


「……」


否定されない。


悠は少しだけ意外に思った。


ハンスは再び畑へ目を向ける。


「魔法が使えるなら、使えばいい」


「……うん」


「便利なもんは便利だからな」


そう言って、ハンスは笑った。


「でもな」


手にした鍬で、土を軽くならす。


「毎日見てやるのも農業だ」


「……毎日?」


「ああ」


「昨日と今日で、土も作物も違う」


「だから見てやる」


悠は黙った。


自分の畑を思い出す。


毎日、水をやる。


必要なら魔法を使う。


収穫する。


それで十分だと思っていた。


魔法を使えば楽だった。


早かった。


何より、面倒がなかった。


「……便利だから」


それだけだった。


悠は自分の手を見る。


そして、ハンスの畑を見る。


ハンスは今も作物を見ている。


土を触っている。


葉を確認している。


何か特別なことをしているようには見えない。


ただ、毎日やっている。


「……」


悠は少しだけ考えた。


自分の畑も、もっとちゃんと見てみようか。


そんなことを、初めて思った。


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