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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene3 ハンス登場

村の中を歩いていると、畑のほうから声が聞こえてきた。


「よいしょ……っと」


一人の男性が、畑の土を耕している。


日に焼けた顔に、使い込まれた作業着。


手には鍬を持っている。


リアがその男性に気づいた。


「あ、ハンスさん」


男性が顔を上げる。


「おう、リアか」


「こんにちは」


「ああ、こんにちは」


リアは悠のほうを見る。


「悠、こっちハンスさん」


「……こんにちは」


「村で農業をやってる人だよ」


ハンスは悠を見る。


それから、悠が持っている籠に目を向けた。


「ん?」


籠の中には、悠の畑で採れた野菜が入っている。


ハンスは一つ手に取った。


「おお」


少し驚いたような声を上げる。


「いい出来だな」


「……そう?」


「形もいいし、傷も少ねえ」


ハンスは野菜を裏返したり、葉を眺めたりする。


「どうやって育ててる?」


「……」


悠は少し考えた。


水をやって。


土を整えて。


種を植えて。


必要なら魔法も使う。


けれど、それを一から説明するのは面倒だった。


だから。


「……普通に」


「普通って言われてもな」


ハンスが苦笑する。


「農家にとっちゃ、その普通が一番気になるんだよ」


「……そうなんだ」


「ああ」


ハンスは野菜を籠へ戻した。


そして、ふと悠を見る。


「お前さん、森に住んでるんだったな?」


「……うん」


「畑も作ってるのか?」


「……ある」


「どれくらいだ?」


悠は少し考える。


「……これくらい」


手で大きさを示す。


ハンスはその動きを見て、少し考え込んだ。


「一度、見せてもらいてえな」


「……僕の畑?」


「そうだ」


ハンスは笑う。


「どんなふうに育ててるのか、気になるからな」


悠は少しだけ迷った。


自分の家。


自分の畑。


そこへ村の人を案内する。


以前なら、かなり抵抗があっただろう。


けれど。


相手は農業の人だ。


畑を見たいだけらしい。


それくらいなら――。


「……いいよ」


「本当か?」


「……うん」


「じゃあ、今度頼むわ」


ハンスは満足そうに頷いた。


悠は籠を持ち直す。


そして、ふと思った。


自分の畑について、誰かに興味を持たれたのは初めてだった。


「……」


別に、嫌ではなかった。


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