Scene2 村へ
村へ続く道を、悠とリアは並んで歩いていた。
森を抜けると、少しずつ人の声が聞こえてくる。
村が近い。
以前なら、このあたりから少し緊張していた。
どんな人がいるのか。
何を話しかけられるのか。
考えるだけで、帰りたくなった。
けれど今日は、そこまで気にならなかった。
「着いたね」
リアが言う。
「……うん」
村の中へ入る。
道を歩いている人。
店先で話をしている人。
畑から戻ってくる人。
いつもと変わらない村の風景だった。
悠が歩いていると、パン屋の前から声が飛んできた。
「悠、おはよう!」
ミーナだった。
悠は少しだけ足を止める。
「……おはよう」
「今日もリアと一緒?」
「……うん」
「じゃあ、帰りに寄っていってね」
「……分かった」
それだけのやり取りだった。
ミーナはすぐに店の仕事へ戻っていく。
悠も歩き出す。
しばらくすると、今度は反対側から人影が近づいてきた。
ドルフだった。
悠の横を通り過ぎるとき、こちらを見る。
「悠」
「……こんにちは」
ドルフは小さく頷き、そのまま歩いていった。
「……」
悠はその背中を見送る。
以前なら。
知らない人に声をかけられた。
何を返せばいいのか分からない。
変なことを言ったらどうしよう。
そんなことを考えて、頭の中がいっぱいになっていた。
でも、今は違う。
ミーナも。
ドルフも。
知っている。
自分のことを知っている。
そして、自分も二人のことを知っている。
ただ、それだけだった。
それだけなのに。
村を歩くことが、少しだけ楽になっていた。
悠は隣を歩くリアを見る。
「……」
「どうしたの?」
「……なんでもない」
そして、また村の中を歩いていく。
今の悠にとって、ここはもう――。
「知らない人に囲まれる場所」ではなかった。
**知っている人に、挨拶をする場所。**
そのくらいには、村が近くなっていた。




