第27話 村に行く理由 Scene1 朝
朝。
窓から差し込む光で、悠は目を覚ました。
いつものように朝食を済ませ、畑の様子を見ていると、森の向こうから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「おはよう、悠」
「……おはよう」
リアだった。
籠を抱えて、いつものように家までやってくる。
「今日もいい天気だね」
「……うん」
リアは畑を眺め、それから籠の中を確認した。
「今日は村に行ってくるね」
「……村?」
「うん。薬草を届けに行くの」
悠は小さく頷いた。
以前なら、ここで自分は行かないと決めていた。
村には人がいる。
店もある。
声もする。
人が多い場所に行けば、それだけで疲れる。
だから、
「……じゃあ僕は家にいる」
そう言って終わっていたはずだった。
悠は畑を見る。
収穫した野菜が、いくつか籠の横に置いてある。
一人で食べるには、少し多い。
まだ畑にはたくさん残っている。
悠はしばらく野菜を見つめた。
そして、一つ手に取る。
「……これ、村に持っていく」
「え?」
リアが目を丸くした。
悠は野菜を籠に入れる。
「……多いから」
「悠も行くの?」
「……うん」
リアは少し嬉しそうに笑った。
「そっか」
「……」
悠は村へ向かう準備をする。
以前は、村へ行く理由を探していたわけではない。
むしろ、行かない理由ならいくらでもあった。
けれど今は違う。
村へ行けば、野菜を渡せる。
ミーナにも会う。
ドルフにも会う。
リリにも会うかもしれない。
そう考えると――。
「……」
別に、行ってもいい気がした。
村は相変わらず、人が多い。
きっと疲れる。
それでも。
悠にとって村は、少しずつ、
**「人がたくさんいる場所」から「野菜を届ける場所」へと変わり始めていた。**
「じゃあ、行こうか」
リアが言う。
「……うん」
悠は籠を持ち、家を出た。




