Scene2 家の灯り
森の中を歩いていると、木々の向こうに小さな明かりが見えてきた。
悠の家だった。
窓から、暖かな光が漏れている。
その光を見た瞬間、悠の足が少しだけ速くなった。
家の前では、ノアが待っていた。
悠たちの姿を見つけると、嬉しそうに鳴く。
「きゅー!」
「……ノア」
小さな体が、悠の足元まで駆けてくる。
悠はその頭を軽く撫でた。
そして、目の前の家を見る。
少し前まで、ここはただの「住む場所」だった。
雨をしのげて、眠ることができて、食事をする場所。
それだけだった。
けれど、今は違う。
ここには、ノアがいる。
リアが来る。
村でもらったものがあり、誰かが直してくれた道具がある。
今日の祭りで疲れた体を、ゆっくり休ませる場所でもある。
悠は家の扉を見つめた。
そして――
「……ただいま」
今度は、迷わなかった。
返事がなくても、言葉にすることに違和感がなかった。
「おかえり、悠」
隣から、リアの声がする。
悠は少しだけリアを見る。
「……うん」
それだけ答えて、扉を開けた。
暖かな灯りが、二人を迎え入れる。
ノアも嬉しそうに家の中へ駆けていく。
悠はその後ろ姿を眺めながら、ふと思った。
ここは、もう一人で暮らすためだけの家ではないのかもしれない。
「……」
けれど、それを口にすることはなかった。
ただ、いつものように靴を脱いで、家の中へ入る。
その時間が――
少しだけ、心地よかった。




