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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene3 祭り

村の広場には、たくさんの人が集まっていた。


いつもより賑やかだ。


机には料理が並び、焼いた肉や野菜の香りが広がっている。


小さな楽器の音が聞こえ、子どもたちは広場を走り回っていた。


道の端には簡単な露店も並んでいる。


「……」


悠は、リアの隣を歩いていた。


やっぱり人が多い。


あちこちから声が聞こえる。


笑い声。


話し声。


子どもの声。


悠は少し緊張した。


できれば、人の少ないところにいたい。


けれど、今日は帰ろうとは思わなかった。


「大丈夫?」


リアが隣から聞く。


「……うん」


そう答える。


リアが隣にいる。


それだけで、少しだけ落ち着いた。


その時。


「悠!」


声がした。


振り向くと、ミーナが手を振っていた。


「来たんだね!」


「……うん」


ミーナは嬉しそうに笑うと、焼きたてのパンを一つ差し出した。


「これ、食べな」


「……いいの?」


「もちろん。お祭りだからね」


悠はパンを受け取る。


「……ありがとう」


「ゆっくり食べてね」


ミーナが去っていく。


すると、今度は横からドルフがやってきた。


何も言わない。


ただ、悠の前に飲み物を置いた。


「……?」


悠がドルフを見る。


ドルフはそれだけで、その場を離れていった。


「……ありがとう」


悠は小さく頭を下げる。


その直後。


「悠ー!」


今度はリリの声。


見ると、リリがノアを連れて走ってくる。


「ノアも一緒!」


「きゅー!」


「……ノア」


ノアは悠を見ると、嬉しそうに尻尾を振った。


「きゅー!」


「じゃあ、行ってきまーす!」


リリがノアを連れて走っていく。


「きゅー!」


「待ってよー!」


二人の姿が、人の間へ消えていく。


悠はその様子を眺めていた。


「ふふ」


リアが笑う。


「楽しそうだね」


「……うん」


少し離れたところでは、村長のエドガーが村人たちと話していた。


悠と目が合うと、エドガーが笑って手を上げる。


悠も小さく頭を下げた。


広場には、まだたくさんの人がいる。


知らない人も多い。


人の声も多い。


やっぱり、少し疲れる。


それでも。


悠は、周囲を見回した。


ミーナがいる。


ドルフがいる。


リリがいる。


村長がいる。


そして、隣にはリアがいる。


悠は手に持ったパンを見る。


以前なら、ここはただの知らない場所だった。


知らない人ばかりで、何をすればいいのか分からない場所。


でも、今は違う。


悠は小さく呟いた。


「……知ってる人がいる」


リアが振り向く。


「うん」


悠は広場をもう一度見る。


まだ緊張している。


人が多いのも、やっぱり苦手だ。


それでも――


ここはもう、ただの「知らない人だらけの村」ではなかった。


知っている人がいる。


自分に声をかけてくれる人がいる。


自分が知っている名前が、いくつもある。


それだけで、村の見え方が少し変わっていた。


悠はパンを一口食べる。


「……うまい」


「でしょ?」


リアが笑う。


悠はそのまま、しばらく祭りの様子を眺めていた。


今日は、もう少しここにいてもいい。


そう思えた。


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