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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene2 今回は逃げない


「……」


悠は、しばらく黙っていた。


窓の外を見る。


森は静かだ。


鳥の声が聞こえる。


風が木の葉を揺らしている。


いつもと変わらない。


ここにいれば、落ち着いて過ごせる。


村へ行けば、人がいる。


しかも今日は祭りだ。


普段より、ずっと多い。


できれば行きたくない。


そう思う。


けれど――


以前の自分なら、迷うことすらなかった。


人が多いと分かった時点で、


「……帰りたい」


そう言っていた。


実際、一度目に村へ行った時はそうした。


村へ入って、少し歩いただけで耐えられなくなった。


リアが「じゃあ帰ろうか」と言ってくれて、それで帰った。


でも、今は。


悠はリアを見る。


リアは何も言わずに待っていた。


無理に誘うこともしない。


来てほしいとも言わない。


ただ、悠が自分で決めるのを待っている。


「……」


悠は少し考えた。


人は多い。


たぶん、疲れる。


それでも――


知っている人がいる。


ミーナもいる。


ドルフもいる。


リリもいる。


村長もいる。


そして、リアが隣にいる。


悠は小さく息を吐いた。


「……少しだけなら」


リアの顔が明るくなる。


「うん!」


嬉しそうな声だった。


「じゃあ、一緒に行こう!」


「……うん」


悠は立ち上がる。


外へ出る準備をする。


玄関を開ける。


森の空気が入ってくる。


悠は一度だけ家を振り返った。


ここに帰ってくればいい。


そう思うと、少しだけ気が楽になった。


「……行こう」


悠はリアの隣に並ぶ。


そして、自分から村へ向かって歩き始めた。


今回は、誰かに連れていかれるのではない。


自分で決めた。


ほんの少しだけ。


それでも悠にとっては、大きな一歩だった。


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