第二十五話 Scene1 祭りの準備
ある日の朝。
リアが、いつもより少し早く家へやってきた。
「おはよう、悠」
「……おはよう」
リアは玄関に入ると、いつもの椅子に座る。
その顔が、いつもより少し楽しそうだった。
「今日ね、村で収穫祭の準備をするんだ」
「……収穫祭?」
「うん。秋の収穫をみんなで祝うの」
悠は少し考える。
祭り。
その言葉から思い浮かぶのは、たくさんの人だった。
リアは続ける。
「料理を作ったり、広場を飾ったりするんだって」
「……そう」
「私も手伝いに行くよ」
「……うん」
リアが立ち上がる。
そして、少しだけ悠を見る。
「悠も来る?」
「……」
悠は固まった。
村。
人。
祭り。
頭の中で、その三つが並ぶ。
普段の村ですら、人がそれなりにいる。
祭りなら、それ以上だろう。
悠は恐る恐る聞いた。
「……人、多い?」
「多い」
即答だった。
「……」
悠は黙った。
やっぱり多いらしい。
リアはそんな悠を見て、少し笑う。
「でも、無理に来なくてもいいよ」
「……」
悠は窓の外を見る。
森はいつも通り静かだった。
家の中も静かだ。
ここにいれば、何も問題はない。
けれど――
最近は、リアが来る。
ミーナやドルフも知っている。
リリや村長の顔も分かる。
村へ行くこと自体は、以前ほど怖くなくなっていた。
それでも祭りとなると話は別だ。
「……」
悠はしばらく考えた。
リアは急かさない。
ただ、答えを待っている。
悠はまだ、祭りへ行くとは決められなかった。
「……」
そのまま、窓の外を眺め続けた。




