第二十二話 雨の日、再び Scene1 突然の雨
、ぽつ、と葉を叩いていた雨音は、少しずつ大きくなっていく。
悠は家の中で、窓の外を眺めていた。
「……雨か」
朝は晴れていたはずなのに、いつの間にか空には厚い雲が広がっている。
森の木々が雨に濡れ、葉の一枚一枚から水滴が落ちていた。
悠は本を閉じる。
今日は畑仕事も一段落している。
雨が止むまでは、家でゆっくりしていればいい。
そう思っていた、その時だった。
コンコン。
玄関から、小さな音がした。
「……?」
悠は立ち上がる。
この音にも、少しだけ慣れてきた。
以前なら、誰が来たのか分からないだけで警戒していた。
けれど、今はなんとなく分かる。
悠は玄関へ向かい、扉を開けた。
「おーい、悠」
そこにいたのは、やっぱりリアだった。
前回のようにずぶ濡れというわけではない。
雨具を身につけているらしく、髪もそれほど濡れていなかった。
リアは雨の向こうを振り返ってから、悠を見る。
「また雨だね」
悠は空を見上げる。
灰色の雲から、途切れることなく雨が落ちている。
「……うん」
「今日は急に降ってきたから、ちょっとびっくりしたよ」
「……そう」
リアはそう言ってから、いつものように家の中を覗き込む。
「入っていい?」
「……うん」
前回とは違う。
あの時は、雨に濡れたリアを見て、どうすればいいのか分からなかった。
家に入れるだけでも少し迷った。
でも今は、そこまで考えなくてもよかった。
リアが来ることも。
リアが家に入ることも。
少しずつ、いつものことになっている。
リアが中へ入る。
「お邪魔します」
「……うん」
ノアが奥から駆けてきた。
「きゅー!」
「ノア、元気だね」
「きゅ!」
リアがしゃがんでノアの頭を撫でる。
ノアは嬉しそうに尻尾を振った。
悠はその様子を眺めながら、窓の外を見る。
雨はまだ降っている。
今日は、外で何かをするのは難しそうだった。
「……今日は、雨の日か」
「うん」
リアは笑う。
「じゃあ、今日はゆっくりしようか」
「……そうだね」
悠はそう答えてから、少しだけ不思議に思った。
以前なら、雨の日は一人で過ごすものだった。
今は、家の中にもう一人いる。
それが、思っていたより自然だった。




