Scene3 ベッド
小屋の中を見回す。
やはり、何もない。
「……そういえば」
悠は床を見る。
「寝る場所がないな」
床に直接寝るという方法もある。
けれど、それはできれば避けたい。
せっかく自分の家を作ったのだ。
どうせなら、ちゃんと眠れる場所が欲しい。
「ベッド、作るか」
悠は頭の中で形を思い浮かべた。
木製の枠。
その上に柔らかな布団。
大きさは、一人で寝るには十分。
「創造」
魔法が発動する。
次の瞬間。
目の前に、一台のベッドが完成していた。
「……」
悠は近づく。
木の枠を軽く叩いてみる。
しっかりしている。
問題なさそうだ。
「……寝てみるか」
腰を下ろす。
そして、そのまま後ろへ倒れ込んだ。
ふわっ。
「…………」
柔らかい。
身体がゆっくり沈んでいく。
背中に伝わる感触が心地いい。
「……最高」
思わず声が漏れた。
昨日から色々あった。
転生して。
森を歩いて。
家を作って。
能力を確認して。
これからの生活について考えて。
思ったより疲れていたらしい。
「……ちょっとだけ」
目を閉じる。
少し休むだけ。
そう思っていた。
けれど。
静かな森の音。
窓から入る柔らかな風。
そして、ふかふかのベッド。
その組み合わせには勝てなかった。
「…………」
悠の意識が、ゆっくりと沈んでいく。
数分後。
小屋の中には、静かな寝息だけが響いていた。
異世界生活、二日目。
悠が最初に覚えたこと。
それは――。
自分で作った家のベッドは、最高に気持ちいい。




