Scene2 ドルフの工房
村の外れに、小さな工房があった。
入口を開けると、金属を叩く音が聞こえてくる。
カン、カン、と一定のリズムで響いている。
「ここだよ」
リアが言う。
悠は工房の中を覗いた。
そこに、大柄な男がいた。
厚い腕。
日に焼けた顔。
黙々と作業を続けている。
「ドルフさん」
リアが声をかける。
男が顔を上げた。
「……ん?」
悠は少し緊張した。
けれど、リアから聞いていた通り、あまり話さない人らしい。
悠は持ってきた農具を差し出した。
「……これ」
ドルフは受け取る。
折れた柄を確認し、壊れた部分を手で軽く触る。
「……これなら直せる」
「……お願いします」
「明日にはできる」
「……はい」
それだけだった。
ドルフは農具を作業台の上へ置くと、すぐに別の作業へ戻った。
悠はその場に立ったまま、少しだけ固まる。
「……」
会話が終わった。
何か話さなければいけない。
そんなこともない。
沈黙していても、ドルフは気にしていない。
悠は少しだけ周囲を見回した。
火の燃える音。
金属を叩く音。
工房の中は暑い。
けれど、不思議と居心地が悪くなかった。
「……」
悠は小さく息を吐いた。
リアが隣で笑っている。
「どう?」
「……話しやすい」
「ふふっ」
リアが笑う。
悠は少しだけ首を傾げた。
何がおかしいのかは、よく分からなかった。
ただ。
ドルフとは、無理に話さなくてもいい。
それだけで、悠には十分だった。




