Scene2 村長との会話
村長は改めて悠のほうを向いた。
「ルミナ村の村長をしているエドガーだ」
穏やかな声だった。
悠は少しだけ姿勢を正す。
「……悠です」
「知っているよ」
「……」
悠は黙った。
知っている。
その言葉に、少しだけ緊張する。
森の中で暮らしていること。
リアと一緒にいること。
もしかしたら、畑のことも知られているのかもしれない。
何を聞かれるのだろう。
そう思っていた。
けれど、エドガーは何も聞かなかった。
どこから来たのか。
なぜ森に住んでいるのか。
家はどうやって作ったのか。
そんなことを尋ねることもない。
ただ、悠の顔を見て静かに言った。
「森で暮らしているなら、困ったことがあれば村を頼ってくれ」
「……はい」
悠は小さく頷いた。
「食べ物でも、道具でも、人手でもね。村に来れば誰かが力になってくれる」
「……」
悠は少し考える。
村は苦手だ。
人も多い。
できれば、あまり行きたくない。
けれど――。
「……分かりました」
「うん」
エドガーは頷いた。
「それだけだ」
「……え?」
悠が顔を上げる。
エドガーは笑っていた。
「今日は挨拶に来ただけだからね」
「……」
悠は少し呆気に取られた。
もっと色々聞かれると思っていた。
けれど、本当にそれだけらしい。
エドガーはそれ以上踏み込むことなく、家の周りを少し眺める。
「良い場所だね」
「……うん」
「では、邪魔をしたね」
エドガーが踵を返す。
悠はその背中を見送った。
村長。
もっと怖い人なのかと思っていた。
けれど。
「……」
悠は小さく息を吐いた。
少しだけ、肩の力が抜ける。
リアが隣で笑った。
「安心した?」
「……うん」
悠は素直に頷いた。
村長との会話は、思っていたよりずっと短かった。
そして――。
そのくらいが、悠にはちょうどよかった。




